叡智の三猿

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aespa紅白出場をめぐる議論が問いかけたもの

年末は紅白を見ながら、ノスタルジーにひたり、年明けとともに近所の神社に初詣をしました。

毎年、紅白はさまざまな話題を提供しますが、わたしにとって一番の関心事は K-POPの人気グループ aespa の出場です。いちK-POPのファンとして、この状況下で、果たしてステージを無事にこなせるのかが心配でした。

NHK紅白歌合戦を前に、ガールズグループ aespa の出場を巡り、反対署名が14万6千筆を超えました。発端は、メンバーの NINGNING(ニンニン)が2022年に投稿したランプ写真が、原爆のきのこ雲を想起させるとしてSNS上で炎上したことです。当時は大きな問題になりませんでしたが、紅白初出場決定を機に過去の投稿が掘り起こされました。日本は唯一の被爆国であることから「公共放送としてふさわしいか?」という議論に発展しました。

aespaの所属事務所(SM ENTERTAINMENT)は、投稿の意図をこのように否定しました。

aespaメンバーのNINGNINGがSNSに投稿した内容について、多くのご指摘をいただきました。この投稿に特定の目的や意図はございませんでしたが、さまざまなご懸念を生じさせるものでした。今後はより細心の注意を払ってまいります。~SM ENTERTAINMENTのホームページより(2025.12.29)

そして、当事者であるNINGNINGの体調不良による不出場を発表しました。

でも、SNSではNHKの判断や対応の遅さを疑問視する声が相次ぎました。

わたしがこの炎上の発端となった「きのこ雲ランプ」の投稿をみたとき、ふと連想したのはカウント・ベイシーの名盤「アトミック・ベイシー」です。

「アトミック・ベイシー」は、カウント・ベイシー楽団が1958年に発表したアルバムです。グラミー賞で「最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム賞」と「最優秀パフォーマンス賞ダンス音楽オーケストラ部門」の2部門を受賞しました。

カウント・ベイシー楽団は1936年に活動を開始し、1945年に一時解散しましたが、1951年に再結成されました。その後「エイプリル・イン・パリ」など多数の名盤を生み出し、ビッグバンド界で重要な存在となりました。

ベイシー楽団は1960年代から何度も来日公演を行ってます。日本のジャズ文化の中でも、ベイシーの作品は定番として親しまれてます。日本ではベイシーのスタイルに影響を受けた演奏家や楽団も少なくありません。「アトミック・ベイシー」をはじめとする彼の名盤は、今でも日本のジャズファンに愛聴されています。

そんな「アトミック・ベイシー」のジャケットは見て、一目瞭然ですが、直接的な原爆投下の画像です。でも、日本でこのアルバムやベイシー楽団が批判されることはほぼありません。

もちろん、時代が違います。「アトミック」は、悲劇より爆発的なエネルギーを表現した比喩として受け止めるのが大勢だったかもしれません。また、ジャズファンはジャケットデザインを政治的・歴史的文脈とは切り離して芸術表現として捉えているのかもしれません。

ただ、仮にK-POPアーティストがこのようなきのこ雲のジャケットをアルバムに使用したら、大きな批判と炎上が起きることは必至です。

日韓関係は歴史的に複雑です。韓国のアーティストが原爆を表現したら、反日のレッテルを貼るでしょう。今回のaespaの事例のように「日本への配慮の欠如」として受け止められるでしょう。日本に原爆を投下し、占領した経緯のあるアメリカのアーティストなら、あまり問題視されない行為も、日本に統治された経緯のある韓国のアーティストが行ったら、問題になってしまうのです。

そして、いまはSNS時代です。悪い情報は瞬時に拡散し、批判の声はより大きくなるでしょう。状況によっては、日本市場での活動停止となり、国際的な議論に発展する可能性もあるでしょう。

本来、「怒り」は相手の反応を見て、場の空気を読むことで、自分の言葉を途中で引き戻すブレーキによって弱まるものです。

しかしネットは、相手の表情が見えません。ある意味で沈黙は「同意」と同じです。「エコーチェンバー現象」という言葉がありますが、これはSNSで自分と似た意見や価値観を持つ人々と交流することで、自分の意見が肯定され増幅され、異なる視点や情報に触れる機会が減り、偏った考えに固執してしまう現象を指します。リアルな世界と比べ、ネットは怒りを保存・増幅する場所になりやすいのです。

エコーチェンバー現象

複雑な日韓関係が背景にあるなか、SNSの時代が重なったことで、どう見ても弱い立場にあるアイドル個人に誹謗中傷が集中してしまったと思います。

1名が欠けた3人のメンバーによるaespaの紅白ステージは、圧倒的に華やかでした。紅白は懐メロが多いなか、数少ない現代を感じ、かっこよかったと思います。ステージを見るまでは、全員出場を辞退する方が「よい落としどころ」だと思ってたのですが、ステージをみると、やはり観れてよかったと思いました。

攻撃するべきは個人ではありません。

この社会は個人を攻撃するのではなく、背景や文脈を冷静に確認する姿勢が必要だと思います。怒りはSNSで可視化されやすいですが、誹謗・中傷に転じる前に、もっと早くから、NHKやSM ENTERTAINMENTは個人の責任にせず、説明責任を果たすべきでした。

マイナスの感情を排除ではなく対話と改善に向ける振る舞いだけが、社会の成熟につながると思います。

今年もこのブログをよろしくお願いします。