ITエンジニアは文字通り、エンジニアなのですが、ほかのエンジニアとはちょっと違う特性があると思ってます。
エンジニアは、機械、電気、化学などの理工学系領域に関する専門知識や技術を持つ技術者の総称です。ですので、エンジニアになるための第一歩は、自らが専門としたい領域のある大学の学部学科に行くことでしょう。大学の理系学部には、研究室があります。わたしは化学系の学生でした。所属する学科には、無機、有機、分析、バイオ、高分子など、専門を学ぶための研究室が多くありました。
研究室は企業とつながってます。文系の就職活動は、春にはいろいろな会社を訪問し、数社の内定を勝ち取り、最終的にどこかに決めるという動きが一般的です。しかし、理工系の場合は、毛色が異なります。研究室からの推薦による就職が多く占めます。研究室から推薦されて内定を取る以上、複数の内定をとり、どこかを選択するという概念はありません。もちろんより専門性を高めるため、大学院に行く人も多数います。
学生から人気の高い研究室は、大手企業との関係が強い教授がいる研究室です。安全確実に大手企業に入るためには、人気の研究室に入る必要があります。その枠に入りたいがために、学生はよい評価点で単位をとるための勉強します。
ですので、大学で専門を学び、その道のエンジニアになった以上、自分がそこで何をするべきかの目標はある程度は明確です。
しかし、ITエンジニアは、大学でITを専門した情報工学などの領域を学ぶことなく、会社のIT部門に配属する人が多くいます。ほかのエンジニアではまずないのですが、文系出身の学生も普通にいます。
これは、ITエンジニアの需要があまりにも多いためです。採用のターゲットを学校で情報系を専門とする学生に限定してしまうと、まともに採用できません。とりあえず、人物的に問題がなさそうであれば採用し、あとは会社のOJT(オージェーティー)と評して、実務を通じて先輩社員から技術的な指導を受ける方式が採用されてます。
そのため、会社のIT部門に所属しながらも、「自分はどうしたらITの仕事ができるのか?」という悩みを持つ人が多くいます。
誰もが数学で「必要条件と十分条件」を学んだことがあると思います。
必要条件と十分条件の概念を絵で示すと下の集合です。必要条件は十分条件を含んでます。

十分条件はこれさえあれば、十分というものです。たとえば、車を運転することができる十分条件は?と、問われたら「運転免許証を持っていること」と、答えれば十分です(有効期限内の免許証であるとか、免停になっていないなど、細かいことはさておき・・・)。
会社でITの仕事をするための十分条件は「IT部門に所属している」ことでしょう。
しかし、IT部門に所属しながら「自分はどうしたらITの仕事ができるのか?」という悩みを持つ人は、ITの仕事で成果を発揮するための「必要条件」が分からないのです。
そして、この悩みを少しでも解消するべく、IT関連の資格に挑戦するエンジニアが多くいます。IT関連は資格が異常に多く、マイナーなものを含めれば、軽く100を軽く超えます。それだけ、資格を取得したいと考えるエンジニアが多い証しです。ただ、本人としては残念ながら、多くは資格取得に挫折します。そもそも、日常の仕事をしつつ、資格を取得するための勉強をプラスアルファでするのは、肉体的にも精神的にもキツイのであたりまえです。
製造業でよく使われる言葉のひとつにQCDというのがあります。これは、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の頭文字をとったものです。

ITの利用者から信頼されるエンジニアは、QCDが優れている人です。QCDは製造業において、組織的な生産管理の現場で使いますが、これを個人のITエンジニアに置き換えても使える言葉です。
品質であればよい成果物です。バグの少ないプログラムとかです。コストは定時勤務と置き換えていいでしょう。納期は決められたタイミングで決められたことをするということになります。毎日、定時出社、定時退社を繰り返し、質の高い納品物を決められた納期に収めれば、完ぺきですよね。
でも、そんなITエンジニア、いまだかって見たことありません!
ですので、QCDのすべてを一気に求めるのではなく、何かをとっかかりとして、徐々に広げていくのがいいんだと思います。わたしの場合は「納期」をいちばん意識してます。納期というと、最終成果物を期日に納品することのように思われがちですが、組織でなく個人で捉えるなら、そこまで大きなことではありません。ひとつひとつの作業を計画通りに行い、決められた日までに作業を終えることの繰り返しです。
せっかくの縁があり、ITエンジニアになったのです。誰もが夢をもって自分が納得できる仕事をして欲しいと思います。

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~「夢をあきらめないで(岡村孝子)1987年」