叡智の三猿

〜森羅万象を「情報セキュリティ」で語る

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24時間戦えますか

琵琶法師は「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」と唱えます。

要は景気がよく得意になっていても、栄えはやがて滅びるという世の常を語ってます。

日本は1991年にバブルが崩壊しました。そこから、経済は長期の停滞に陥ります。雇用は悪化し、賃金は伸び悩んでます。

G7各国の名目賃金の推移(厚生労働省)1991年=100

バブルの頃は学生も企業も「平家」の如く驕ってました。

わたしはオールCに近い成績で1990年に大学を卒業しましたが、就職活動で苦労した感覚はありませんでした。いまのように、GPAが就活で考慮されるいまだと、相当苦労したでしょう。

企業も企業で、人さえ採用しておけば、なんとかなると考えてました。

あのとき、入社のオリエンテーションで、たくさんの新卒生を前にして、IT部門の事業本部長はこう言ってました。

君たちは、経験がないことで、仕事があるかを心配しているかもしれない。でも、そんな心配は全く無用です。当社に仕事はたくさんあります。

確かに仕事はたくさんありました。

でも、その仕事の多くは、炎上しているプロジェクトの火消しをする仕事でした。

会社は技術的な裏付けもないままに、案件を受注し、計画性のないプロジェクトの進行によって、なるべくしてなった炎上案件です。

技術を持たない、新人エンジニアは出口のない、検証やデータ修正を重ねました。


黄色と黒は勇気のしるし
24時間戦えますか

リゲイン、リゲイン、
ぼくらのリゲイン

アタッシュケースに勇気のしるし
はるか世界で戦えますか

ビジネスマン ビジネスマン
ジャパニーズ ビジネスマン
~「勇気のしるし ~リゲインのテーマ~(牛若丸三郎太)1989年」

会社に入る前、24時間働くフレーズをギャグとして認識していた、わたし達は、現実の世界で同僚が24時間働く姿をみて、唖然としました。

わたしは幸いにも炎上案件に投入されることはありませんでした。

入社してから半年あまりは、3交代制のオペレータでした。キンキンに冷えたコンピュータルームに、ずっと閉じこもるので、体調管理は難しいと思いました。でも、この仕事は残業という概念がありません。朝勤、日勤、夜勤が8時間で区分けされてます。作業はモニターに表示されたメッセージに従い、弁当程度の重さの記憶媒体を汎用機に挿入し、出力された帳票を部門別にセパレートすることです。決して重労働ではありません。慣れれば、それほどの苦労はない仕事です。

その後は、会社が対外的なイメージをよくするための、オフイス空間を改革するプロジェクトにアサインされました。女性社員と一緒にショールームを見ては、事務所のレイアウトを議論し、デザイン会社の方と一緒に入社案内のパンフレットを話し合ったりしました。

仕事が何もできないのに、快適な職場空間を検討するのは、ある意味で仕事をなめているといわれそうです。バブルはそんな時代だったのです。

バブルの頃は、とりあえず、やってみて「成長の機会」を掴むというのが、日本企業の空気だったと思います。

「成長の機会」を掴むこと自体は間違ってはいないと思います。でも、もっとリスク分析をしっかりしておく必要があったと思います。

今日、リスク分析は、対策を構築するうえで、必須のテーマです。

リスク分析は大別すると、ベースラインアプローチと、非形式的アプローチがあります。この言葉は「情報セキュリティ」で多く使われますが、情報セキュリティに留まらず、事業計画の立案や、マーケティング戦略など、あらゆる分野に於いて、普遍性がある考え方だと思います。

ベースラインアプローチは、一般的に知られるガイドラインや、業界標準を参考にしながら、組織にとってあるべきセキュリティレベルを設定する手法です。そこから、現状のセキュリティ対策と、あるべき姿とのギャップを洗い出し、改善点を明らかにする手法です。

ベースラインアプローチと対比するのが、非形式的アプローチです。

こちらは、組織の担当者の経験に基づいて、リスク分析を行う手法です。

情報セキュリティに関心を持つ担当者や専門家が、経験や勘を頼りにしてリスクを評価する活動です。必要に応じて外部からコンサルタントを招いて意見を聞くこともあります。

何をするにしても、リスクを甘く見るのは危険です。

「驕れる人も久しからず」です。