杏里。1980年代~90年代のはじめによく聴きました。
それからしばらく聴くことはなかったのですが、最近になってまたよく聴くようになりました。
80年代のトレンドを牽引したアーティストですが、そのファッションスタイルは、レトロファッションとして再び評価されているように思うのです。
杏里の曲で好きな曲はたくさんあるのですが、なんといってもデビュー曲である「オリビアを聴きながら」は、尾崎亜美の歌詞とメロディと、杏里の歌う姿が見事にマッチした色褪せない名曲だと思います。
お気に入りの歌
一人聴いてみるの
オリビアは淋しい心
なぐさめてくれるから
ジャスミンティーは
眠り誘う薬
私らしく一日を
終えたいこんな夜
出会った頃はこんな日が
来るとは思わずにいた
Making good things better
いいえ すんだこと
時を重ねただけ
疲れ果てたあなた
私の幻を愛したの
~「オリビアを聴きながら(杏里)1978年」
出だしの「お気に入りの歌 一人聴いてみるの オリビアは淋しい心 なぐさめてくれるから」で、出てくるオリビアというのは、当然オリビア・ニュートン・ジョンのことです。
オリビア・ニュートン・ジョンといえば、わたしの世代だと、1981年の「フィジカル」の爆発的なヒットが印象にあります。そのミュージックビデオは、エアロビクスの要素が取り入れられているので、オリビアはダンスミュージックのカリスマのようなイメージもあります。しかし、杏里が「オリビアを聴きながら」を歌ったのは1978年です。70年代のオリビア・ニュートン・ジョンは、ダンスミュージックの要素はなく、フォークやカントリーの色合いが濃い時代でした。そもそもデビュー曲は、フォークのカリスマ「ボブ・ディラン」の作品「イフ・ノット・フォー・ユー」(1971年)です。そこから「そよ風の誘惑」(1975年)など、ダンスというよりは、「オリビアは淋しい心 なぐさめてくれるから」の歌詞に沿う楽曲が中心です。
次の「ジャスミンティーは 眠り誘う薬」のフレーズを耳にしたことで、眠る前に「ジャスミンティ」を飲む人がグンと増えたと思います。ただ、これはちょっと科学的な行動ではありません。
そもそもジャスミン茶は、カフェインが含まれてます。カフェインは中枢神経を刺激する作用があり、摂取すると眠気が覚める効果があります。
北海道立消費生活センターの情報によると、緑茶や烏龍茶、紅茶、ほうじ茶などの各種お茶のカフェイン含有量を比較した結果、100mℓおよび1本あたりで最も多かったのは烏龍茶、次いでほうじ茶、紅茶、緑茶、ジャスミン茶の順です。缶コーヒーや栄養ドリンクのカフェインは特に高く、1本あたりではお茶類より大幅に多く含まれていました。ただ、コーラよりも多いお茶も複数ありました。
ちゃんと眠るには、ジャスミン茶よりも、ノンカフェインの麦茶やルイボスティがいいでしょう。ただ、ジャスミンの香りはリラックス作用があります。ストレスや不安を和らげる効果があります。アロマテラピーでも使われる香りで、気持ちを落ち着けるのに効果的です。「リラックス効果= 眠り誘う薬」ですので、寝る前に少量の香りを楽しむ感じで飲むのがいいんだと思います。

そして、次のフレーズは、ちょっと唐突感を覚えます。
「私らしく一日を 終えたいこんな夜」
「私らしい」とは、何でしょうか!?その答えは、後で分かるような前振りをここでしていると思います。
「出会った頃はこんな日が 来るとは思わずにいた」
これは、分かりやすいフレーズです。これを聴いたとき、この歌の主人公は、「失恋」により「寂しさ」を覚え「オリビア」に癒されながら、「ジャスミン茶」で心を落ち着かせようとしている情景が浮かびます。
その感情を引き継ぐように「Making good things better いいえ すんだこと 時を重ねただけ」と、続きます。「Making good things better」について、あまり語られてませんが、これはオリビア・ニュートン・ジョンの アルバム「Making a Good Thing Better(きらめく光のように)」(1977年)を参照してるのは、間違いありません。主人公が聴いてる「オリビア」は、きっと「きらめく光のように」のなかの曲です。

アルバムタイトル曲の「Making a Good Thing Better」は、愛を長続きさせるためには努力と工夫が必要というメッセージです。日々の小さな思いやりが関係をより良くし、マンネリを避ける鍵になります。良い行動を重ねることで、愛は深まり続け、永続的な関係へとつながります。「良い関係をさらに良くする」ことを意識し、二人で支え合いながら愛を育てていこうとする前向きさが表現された歌詞です。
しかし、「オリビアを聴きながら」では、a Good Thing は good things と複数形で語られています。その後に「いいえ すんだこと」と、否定してます。そして、「時を重ねただけ」と語っていることから、二人の恋愛関係は長いことが伺えます。
単数形だった歌詞を複数形にしたのは、当然、意図があるでしょう。きっと、長い年月に起きた「たくさんの良いこと」から、愛を深めようとしたが、無駄だったことを伝えたいんだと思います。オリビア・ニュートン・ジョンの「Making a Good Thing Better」と、杏里の「オリビアを聴きながら」は、180度異なる恋愛関係です。
そして、曲のハイライトとなる強烈なフレーズが登場します。
「疲れ果てたあなた 私の幻を愛したの」
このフレーズを区切ると「疲れ果てた」「あなた」「私」「幻」「愛した」となります。いままでの歌の流れからすると「疲れ果てた」と「私」の相性がよいはずです。なぜなら、「私」は、「寂しく」「オリビアで、癒されたく」「ジャスミン茶で、眠りたい」のですから!!「疲れ果てた」のは「私」というのが、自然です。しかし、この歌は「疲れ果てたあなた」と、表記しているのです。
このフレーズによって、「私」は「あなた」からふられたのではなく、実は「あなた」をふったことに気がつきます。「あなた」が、疲れ果てているのは、好きなのに急にふられたからだと思います。ふられた「あなた」は、精神的ショックや、自己否定の感情が重なっていることでしょう。「私」との思い出や、期待が崩れ果て、心の空白が生まれているでしょう。もしかしたら「自分に何が足りなかったのか」と、悩み「疲れ果てている」のかもしれません。
「私」が、好きだったはずの「あなた」をふったのは、自分の成長と未来を切り開くためです。それは簡単な決意ではありません。でも、相手を大切に思うからこそ、正直な気持ちを伝え、自分に嘘をつかない道を選んだんだと思います。謎だった「私らしく一日を 終えたいこんな夜」の答えが、このフレーズあると思います。
そんな「私」をファッショナブルな雰囲気を持つ杏里の女性像が見事に表現してます。
「オリビアを聴きながら」で表現される女性像は、いまや社会問題化している「ロマンス詐欺」に対しても有効な志向だと思います。
ロマンス詐欺は、攻撃者がネットを使って画面上で愛のやりとりをします。恋愛感情を抱いた相手をだますことでお金を得ようとする詐欺を指します。

ロマンス詐欺に陥らないためには、「恋愛感情」と「現実的判断」を明確に分けて見る視点が重要です。相手の優しい言葉に心を動かされても、冷静な視点で相手の言動や状況を見極める力が大切です。真の愛とは、信頼と誠実さの積み重ねによって築かれるものであり、表面的な親密さや、金銭の要求が絡む関係には警戒しなければなりません。
恋愛は感情の高まりがあります。でも、自分のアイデンティティと、安全を守るための判断力が試される場面でもあります。