SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の定義は、利用者がオンラインでつながり、お互いの情報を共有することで共感を得るサービスといえるでしょう。
グローバルでSNSの先駆けといえば、Facebookですが、日本でのSNSといえば、mixiだと思います。mixiは2000年代のはじめに日本で急速に普及しました。
2006年の「日経トレンディ」ヒット商品の番付(下記)で4位にランクインしました。
- ニンテンドーDS Lite&鍛脳ゲーム
- 軽自動車
- 資生堂 TSUBAKI
- mixi
- W-ZERO3
- 植物性乳酸菌 ラブレ
- EOS Kiss Diital
- ダ・ヴィンチ・コード
- ルックきれいのミスト
- 男前豆腐店
ただ、SNS的なサービスという点では、ラジオの深夜放送も近い感じがします。視聴者から投函されたハガキをパーソナリティが読み上げ、コメントするスタイルは、昭和から続くSNSといってもおかしくありません。
オールナイトニッポンはいまでも続く、長寿の深夜番組です。わたしは中高生だった、1980年あたりから夜のながら勉強の横でオールナイトニッポンを流してました。
いちばんよく聞いたのは「ビートたけしのオールナイトニッポン」だと思います。視聴者のハガキを読みあげ、放送作家の高田文夫が相方として受けるスタイルに結構、ハマりました。ツービートの漫才は、あまり面白いと思ったことはないのですが、深夜放送でのたけしの毒舌は腹を抱えて笑いました。
ビートたけしが笑う対象は、演歌歌手の村田英雄のような大御所だけど、ちょっと時代遅れになった感のある有名人だったり、微妙な知名度の有名人だったりします。視聴者による「プロ野球の”やまもとこうじ”」をネタにした投稿では、オチが広島カープのミスター赤ヘル「山本浩二」のことではなく、巨人の山本功児(1軍ですが、控えでした)だったことが分かると、たけしも高田文夫も大笑いし、こっちもそれに釣られました。
こうなってくると、ながら勉強はもはや、勉強の時間ではなくなります。真夜中のラジオに全神経を集中します。
やがて、ラジオから谷山浩子の歌が流れます。

午前5時ノ新宿駅
長イホームニ散ラバル
赤イ朝陽ヲ集メテ
新鮮ナトコロヲ オナベテ
カラリト カラリト カラリト
コレガ てんぷら☆さんらいず!
てんぷら☆さんらいず!
一度食ベタラ モウ帰レナイ
~「てんぷら☆さんらいず(谷山浩子)1981年」
やばい、もう午前3時だ・・・そろそろ寝なくちゃ。
布団に入らないことで、気だけは焦るのですが、意外と第二部にも聞き入ってしまう自分がいるのでした。深夜放送のラジオはSNS的ですが、SNSとは明確な違いがあります。
SNSでは、どんな人の投稿も瞬時に共有されますが、深夜放送で読まれるハガキは番組スタッフが事前にチェックしたものです。
何人もの視聴者がハガキを投函しますが、番組によって厳選されたハガキだけが、視聴者に共有される仕組みです。
データのリレーションで示すと、ラジオの深夜放送は、n:1 と 1:n の組み合わせです。ここで、n は不特定多数の匿名視聴者です。1はパーソナリティです。n:1や1:n のデータリレーションは、1が介在することで、安定した管理がしやすいのが特徴です。反面、1は情報を流通させるうえでのボトルネックです。たとえば、山のように大量のハガキが届いても、ラジオパーソナリティが紹介できる投稿はごく一部です。1のパフォーマンスが、データ全体を制御する構図です。
一方、SNSは不特定多数の匿名が、不特定多数に共有されます。これをデータリレーションで示すと、n:n となります。1という情報の流通を妨げるボトルネックが存在しません。Instagramや X は、SNSのプラットフォームとして介在はしますが、原則として情報の流通を妨げることはありません。n:n は、非常に柔軟性が高い情報の連携が実現できます。
考えてみれば、初期のSNSであるmixiは招待制でした。mixiの会員からの招待がなければ、mixiの会員になることができませんでした。これはmixiが情報を制御する役割を果たしたともいえます。誹謗中傷で溢れるいまのSNSに比べると、あの頃のmixiの運営は非常に健全な感じがします。
n:n のリレーションは、データベースを設計するうえで、一般的にはNG とされます。データの整合性を正しくつかむことが困難となり、同期がしっかりとれなければ、管理出来なくなるからです。データを制御できないと、情報セキュリティリスクも高まります。機密情報が漏えいしたり、不正アクセスの機会を生みます。
いま、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、情報の見える化を進めるという命題は、IT業界の常識となってます。しかし、目的やアルゴリズムをしっかり組み立てずに、DX化や見える化を進めると、問題になります。それは、設計不足の n:n の構図を作るからです。
単に情報を早く流通させたり、拡散することに主眼をおくのではなく、情報の正確さや、共有する必要性をもっと考えるべきだと思います。
「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿の教えがあります。悪いことを見たり、聞いたり、話したりしないことです。情報を扱うことは、それだけ責任があるんだと思います。