大学生だった1980年代の後半、わたしはスキーが好きでした。世の中は空前のスキーブーム。バブル景気に煽られるように、次々と新しいスキー場が作られ、ゲレンデのふもとには高級リゾートホテルが開業しました。
そのとき、何の媒体で見たのか、忘れてしまったのですが、スキー場が次々と建設されていく状況に警鐘を唸らす記事を読んだ記憶があります。
それは、世界的に気温は上昇していて、このまま推移すると、あと30年もすると、日本の多くのスキー場で雪が降らなくなるという内容でした。記事のなかでは、人工降雪機を導入する必要性についても言及されてました。
人工降雪機は読んで字のごとく、雪を作る機械です。霧状の水を空気で冷やすことで雪にします。正確には水に噴射する空気は圧縮してます。
熱力学第1法則は、次の式で示されます。
ΔU = Q + W
- Q:加えた熱量
- W:行った仕事
- ΔU:内部エネルギーの増加量
圧縮された空気が噴射されることで、膨張します。膨張するのは、仕事量(W)がマイナスを意味するので、内部エネルギーは低下します。下図のイメージでは、Wが逆の上向きの矢印となり、Q+WのWがマイナスになることから、ΔUは減少に転じます。内部エネルギーが減少するので、空気が冷え、水が雪に変わります。これを断熱膨張といいます。

記事では人工降雪機の導入を積極的に進めなければ、スキー場の経営は成り立たなくなるだろうと書いてました。
この記事を読んだとき、はじめて、地球は温暖化しているんだと、認識しました。それ以前も、温暖化の情報に触れていたとは思うのですが、自分が興味を持っているスキーに関連しての記事だったので、記憶に残っているんだと思います。
わたしは記事を読んだとき、温暖化という事実を認識したものの、それを問題とは捉えませんでした。
なぜなら、温暖化により、スキー場が人工雪に依存すると、パウダースノーの概念がなくなります。全国どのスキー場も、軽井沢プリンスホテルスキー場のようなちょっとカリカリしたゲレンデになるのは残念ですが、温暖化でタイヤチェーンをしないままスキー場に行くことが出来るのであれば、マイナスよりもプラスが大きい気がしたからです。
いま、気候変動は「問題」として捉えるのが一般的です。でも、一様にそれを「好ましくないこと」と、捉えるのも違っていると思います。
冬でも雪が降ることなく、暖かくなれば、車の移動が楽なだけではありません。暖房にかかる電気代も節約されるし、北の地域でもより幅の広い農作物を育てることが可能になるでしょう。
そもそも、人は寒くて住みにくい土地より、温暖で住みやすい土地の方が価値を求めます。気候変動が進むことで、いままで注目されていない土地に目を向ける可能性があります。
温暖化は事実です。事実に対して問題と利点を分けて考えなければ、適切な対策を講じることは出来ません。
情報セキュリティも気候変動と似ている部分があると思います。なんでも対策をすることがすべてではありません。
ISO27001の情報セキュリティの定義は「情報の機密性、完全性及び可用性を維持すること。さらに、真正性、責任追跡性、否認防止及び信頼性のような特性を維持することを含める場合もある。」としています。
ここで、情報の機密性、完全性、可用性は、特に重要で、情報セキュリティの3要素(CIA)といいます。そして、真正性、責任追及性、否認防止、信頼性を 情報セキュリティの特性と呼びます。

一般的に情報セキュリティは、情報を守るイメージから、「機密性」を重視する対策と考えられます。
機密性とは、情報を「特定の人」しか情報にアクセスできないように制限することです。
ここで、「特定の人」というのがポイントです。特定をあまりにも絞り過ぎると、本当は情報を必要としている人が、情報にアクセスできない事象が起きる可能性があります。
情報セキュリティには「可用性」という、もうひとつの重要な要素もあります。
可用性は、情報を見ても良い人が、確実に情報を見られるようにすることを指します。機密性に力点を置き過ぎて「特定の人」の絞り込みを誤ると、可用性を維持できないことになります。
組織が管理している情報は多数あります。その情報の種類に応じて、誰が何のために必要かを適切に管理が出来ないと。情報セキュリティは成り立たないことが分かります。