ネットフリックスで韓国ドラマ「おつかれさま」を鑑賞しました。
この作品は60億円といわれる膨大な製作費が当初から話題になってました。なんといっても主演は「国民の妹」と呼ばれるIUと、「国民の彼氏」と呼ばれるパク・ボゴムの共演です。脇を固めるキャストも大物が多く(途中で、想定していなかった大物俳優が出てきたのは、びっくりしました)、製作費の主なコストは、キャストへの支払いに使われたのでしょうか!?
いっぽう、このドラマを観るべきかは、多少のためらいがありました。もちろん、豪華な出演者を考えれば見るべきでしょう。ただ、時代背景が1960年代の済州島を舞台にしてるので、キラキラした役者とは裏腹に華やかさに欠けそうな気がしました。
ためらう自分を観ようと後押ししたのは、わたしが愛読しているブログのひとつ「韓ドラそら豆 のブログ」で、星6.5(満点7.0)と評価が高かったことと、ほかの口コミサイトでも高評価が多かったことです。
観てみると、全体的にはストーリーが淡々と進みます。想定したとおり、華やかの欠片もない、ただ生活苦が続く演出でした。わたしはスマホをいじりつつ、ながら見してました。しかし、6話で「泣ける演出」があり、ラストに向かって、淡々としていた伏線を回収するような、涙の演出が随所に織り込まれ「最後まで観て良かった~!」と、心底感じました。
IUとパク・ボゴムの共演が話題になってますが、実際は違う感じです。もちろん共演してますが、意外と共演しているシーンは少ないのです。IUは母娘2世代(オ・エスン と ヤン・クムミョン)に渡る2役を演じてます。物語の随所で印象的なナレーションも残しているので、存在感があります。
オ・エスンの夫、ヤン・グァンシクとして出演するパク・ボゴムは、作品が盛り上がる後半になると、あまり出なくなります。むしろ、歳をとったヤン・グァンシクの設定で出演するパク・ヘジュンの演技が印象に残ります。この作品を観て、パク・ヘジュンに共感する人が多く出ると思います。しかし、この役者さんの代表作である「夫婦の世界」を鑑賞すると、180度印象が変わり、好感度は天から地に堕ちるのではないかと、どうでもいい心配をしました。
作品の終わりの方で、歳をとったオ・エスン(ムン・ソリが演じてます)が、大病院の番号表示案内で、混乱する場面があります。会計や検査で呼び出す番号が異なり、老人にとって分かりにくいシステムです。これは日本の病院でも同じです。個人の開業医では、いまでも患者を名前で呼ぶのが多いのですが、大病院では「番号」で呼ぶことが多いと思います。病院に来るのは、高齢者が多いので、決して患者にとって優しいシステムとは言えないでしょう。
患者を名前でなく、番号で呼ぶのは、幾つもの点でメリットがあります。
ひとつは「個人情報の保護」という情報セキュリティ上、必要な対策です。「個人情報」とは、生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日、住所、顔写真などにより特定の個人を識別できる情報のことです。個人のプライバシーは尊重されるべきであり、個人情報が拡散することで、不当な差別を受けるのを防ぐ必要があります。特に医療に関わる個人情報は「要配慮個人情報」と呼ばれます。要配慮個人情報は、取り扱いについて特別な配慮が必要とされています。
要配慮個人情報
本人の人種、信条、社会的身分、病歴(身体・知的・精神障害、健康診断/遺伝子検査結果、保健指導、診療・調剤情報など)、前科・前歴、犯罪被害情報のほか、本人に不当・偏見が生じないよう、特に配慮が必要な情報。
被疑者または被告人として逮捕、捜索等、刑事事件に関与した場合(結果として無罪となった場合も含む)や少年の非行(疑いを含む)により保護処分等の少年保護事件手続が行われたものも該当する。
2017年5月30日に全面施行となる「改正個人情報保護法」で規定が新設された。
要配慮個人情報の取得にあたっては、あらかじめ本人の同意が必要となり、オプトアウトによる第三者提供はできない。
~(JIPDEC/要配慮個人情報)より
患者を名前ではなく、番号で呼ぶのは、個人情報保護法に沿ってます。
患者にとっても「名前で呼ばれるのが恥ずかしい、嫌だ」と感じる人がいても不思議ではありません。
診察業務のDX化という点でも、番号管理は有効です。病院のシステムは、受付を行い、そこで発行された番号に基づき、検査→診察→会計の流れを一貫して番号で管理する方が情報連携がスムーズになります。大病院ではひとりの患者が、血液検査やCTスキャンなど、いちどに複数の検査を受けることが多くあります。そのため、情報管理はかなり煩雑です。番号を読み取るバーコードを介すことで、自動的に患者情報を処理することが可能です。
また、患者を名前で呼ぶとトラブルが起きるかもしれません。山田太郎さんが、同じ空間にふたりいたら、どっちの山田太郎さんを呼び出しているのか・・・?混乱することは容易に想像できます。名前が完全一致してなくても、例えば受付の人が「ヤベさん」と呼んだとき、「ヤノさん」が、自分が呼ばれたと反応することもあるでしょう。
病院システムに於いて、番号による情報管理は多くのメリットがあります。しかし、番号という無機質な情報が、患者にとって分かりにくく、番号が電光掲示板に表示されても、そこに気づかなかったりすることは多々あります。
「おつかれさま」を観て、ティッシュで涙を拭きながら・・・情報セキュリティを考慮した情報管理を正確かつ効率的に行うことが、肝心の情報の利用者を迷子にしてしまう結果をもたらすことに考えさせられました。