かって、東横線の渋谷駅は終着駅でした。
東横線は文字通り、東京と横浜の2大都市を結ぶ、走行距離が短い路線です。
ターミナルとなる渋谷駅は、いつもの通勤客で渦巻いていました。でも、横に長い改札を抜けると、新たな世界に入る感覚がしました。
2013年に東横線は渋谷駅から直通で副都心線と乗り入れます。そこから西武線や東武線とつながります。わたしの最寄りの日吉駅から直通で埼玉まで行けるようになりました。
まさか神奈川県で西武線や東武線の車両を見る日が来るとは思いませんでした。
はじめて西武や東武の車両を見たとき、強烈な違和感を覚えました。
一方、横浜方面も2023年に日吉から新横浜を経由し、相鉄線に接続するようになりました。
いまは横浜よりもずっと相模湾に近い湘南台や、県中央部に位置する大和まで路線が伸びてます。
相鉄線の車両は黒に近い、濃紺です。
日吉駅ではじめて黒い相鉄線を見たとき、わたしはこの有名な狂歌を思いました。
「泰平の眠りをさます上喜撰たった四盃で夜も寝られず」
渋谷駅の混雑ぶりは変わりません。
ただ、ターミナルとしての役割を終えた駅は、乗降機能だけが存在する情緒のない駅になってしまったように感じます。
わたしは電車の走行距離が長く連結されたことを嬉くは思いません。
確かに乗り換えなく、遠くまで行けるのは便利でしょう。でも、沿線が長くなったことで、駅の乗降でのちょっとしたトラブルにより電車が遅延する確率が高くなりました。
通勤ラッシュに於いて、列車への乗降トラブルは日常茶飯事です。ひとつの路線が抱える駅が増えるのは、決められた時刻に目的地に到着するうえで、リスクです。
路線をインターネット回線にたとえるなら、一ヵ所の駅で、乗降トラブルにより列車の発信が送れるのは「輻輳(ふくそう)」を意味します。
輻輳はインターネット回線(若しくは電話回線)にアクセスが集中することです。輻輳が発生すると、通信速度が低下します。通信そのものがダウンする可能性もあります。
輻輳はネットワークの様々な箇所で発生します。
たとえば、ある夜間、多数のインターネット利用者が、動画ストリーミングサービスを受けるため、同じインターネットサービスプロバイダ(ISP)へのアクセスが集中すると、ISPの負荷がかかります。そうすると、ISPのゲートウエイで輻輳が発生するかもしれません。
輻輳が発生すると、動画を快適に視聴できなくなります。
ただし、特定のISPのゲートウェイで輻輳が発生した場合、影響を受けるのはそのISPの帯域を利用している利用者のみです。他のISPを利用している人には、直接的な影響はありません。
異なる電車が相互に乗り入れして、ひとつの路線になるのは、ひとつのISPがより多数の利用者からのアクセスを受け入れることを意味します。
理論上、大規模なISPで利用者を多く集めるよりも、小規模な ISP がたくさん存在するネットワークの方が、ネットワーク全体の可用性は向上します。利用者からのアクセスが多数の異なるルートに分散されるからです。ある ISP で輻輳が発生しても、他のISPがその影響を受けずに通信を維持できる可能性が高くなります。
ですので、わたしは、電車が相互乗り入れをして、便利になるより、決められた時刻に安定して発着できる電車の方が嬉しいと思います。
輻輳は会社のネットワーク(LAN)でも発生します。たとえば、Zoom や Teams を使って、多数の従業員が「カメラオン」でWeb会議を行うと、ルーターやアクセスポイント(Wifi)で、一時的な輻輳が起きるかもしれません。
ネットワーク機器のリソースは有限です。リソースを超える通信が発生すると、輻輳がおきえます。
画像データは音声に比べると多くの帯域を必要とします。
音声は圧縮率を高く設定できます。128kbps程度の帯域があれば、必要にして十分な聞き取りが可能です。
一方、画像の場合、1920x1080ピクセル の1枚の静止画像でも、数MBの帯域を消費します。
メタバースを使ってオフィスの仮想化サービスを行っている、oVice社の調査(下図)によると、「オンライン会議」でカメラオンを要求するのは、管理職に多いというアンケート結果(2023年)があります。
特に管理職の立場では、「仕事は組織のミッションに向かってメンバー一丸となって取り組むもの」という感覚があるでしょう。そのためには、カメラオンにして、相手のうなずく様や、表情の変化などの視覚情報が必要と考えるかもしれません。
しかし、カメラオンは動画ですので、静止画よりもさらに大きな帯域幅を必要とします。
輻輳を回避する意味では、Web会議をする際は、カメラオフにする方が、望ましい対応だと思います。