今週からいままで学生だった人たちが、新たな社会人としての生活をスタートさせます。
もうアラカンのわたしも、あの頃、履きなれない硬い革靴の足音を聞きながら、赤坂見附にあるオフィスビルに向かったときのことを覚えてます。
わたしが社会人になったとき、日本企業は世界的に強い存在でした。それなりの大学を出て、東証一部上場企業に就職すれば、将来の心配はないとされてました。
いまは違います。
バブル崩壊以降、日本の企業は世界での競争力を失い、衰退してます。
学者や評論家は、日本企業が衰退した原因は、年功序列や終身雇用、労働組合などの「日本的経営」にあると指摘しました。「日本的経営」が、組織を硬直化させ、経営の非効率化を招き、競争力を低下させているといいました。
会社は雇用の在り方を変えようと「ジョブ型雇用」の導入に踏み切りました。
ジョブ型雇用は、社員の職務内容や求めるスキルを限定して採用する雇用形態を指します。自らの専門性が高められ、その能力が評価されれば、若くても報酬が高くなるのがメリットです。しかし、事業の撤退などで担当する職務がなくなった場合は、他部署への異動が難しい雇用形態というデメリットもあります。そうなると、最終的に解雇・離職です。
ジョブ型雇用は問題点があるものの、大企業を中心として導入が進んでいます。
働く側にとっても、永久にその会社で働くという意識は薄れ、離職率は上昇してます。
厚生労働省の発表によると、2021年に大学を卒業して就職した人のうち、3年以内に仕事を辞めた人の割合は約35%にのぼるようです。
入社後3年以内の離職率が高い傾向にある状態は「753現象」と呼ばれます。753現象は、中卒新入社員の7割、高卒新入社員の5割、大卒新入社員の3割が入社後3年以内に離職する現象を示してます。
そうは言っても、4月1日に入社した時点で、この会社を離職することを考えている社会人は少ないと思います。雇用形態がどうあれ、毎日の仕事は覚えることも多く、慣れるまでに相応の時間がかかります。今日も明日もやるべき仕事をやっていくことが社会人の役目です。
わたしには
わたしの生き方がある
それはおそらく
自分というものを
知るところから
始まるものでしょう
けれど それにしたって
どこでどう
変わってしまうか
そうです わからないまま
生きてゆく
明日からの
そんなわたしです
~「今日までそして明日から(吉田拓郎)1971年」
離職を考えるきっかけは、人それぞれです。
会社の業績が悪化した、事業場が閉鎖した、仕事のストレスが大きい、会社の将来性に対する不安がある、長時間残業・休日出勤が多い、採用前に言ってたことと職場の実際が大きく違う、職場の人間関係が悪い、ノルマや成果に対するプレッシャーがきつい、もっと自分をキャリアアップしたい、仕事がつまらない、ワークライフバランスを実現したい、結婚・出産・育児を転機として、勤務地が遠い、希望しない転勤になった、仕事が正当に評価されてない・・・。
わたしは新卒で入った会社を10年勤め、転職しました。理由は報酬に不満を感じてたからです。
職業選択は本人の自由ですので、もちろん、退職は自由です。
一方、組織にとって従業員の退職は「情報セキュリティ」の脅威です。
退職者は、退職する日まで他の社員と同様に特定の場所への入退室やコンピュータへのアクセスも行ってます。退職して、会社との関係がなくなっても、入退室カードの返却や、システムにログインするアカウントが削除されていないと、不正な入退室や、不正アクセスの脅威が増します。
理想は、退職する時点で、即座にアカウントを削除することです。ただ、実態として、即座にアカウントの削除が行われている会社は少ないと思います。そこまでシステムの運用が、自動化されてないという事情があります。また、メールなどは即座に退職者のアカウントを削除すると、取引先からのメールが受信できなくなります。そうすると、後任者への仕事の引継ぎに支障が生じるという事情もあるでしょう。
ジョブ型雇用は専門を活かした仕事を前提とする雇用形態です。ですので、退職者は競合に転職して、同じような仕事をする可能性が高くなります。このため、元の会社で管理していた秘密情報が他社に渡ってしまう危険が増します。
有名な事件として、2019年12月31日までソフトバンクに在籍していたエンジニアが、5Gネットワークに関する営業秘密を不正に持ち出したというのがあります。このエンジニアは、2020年1月1日から、競合関係にある楽天モバイルに転職してます。エンジニアはソフトバンクに在籍した最終日に、メールにファイル添付をすることで、自分自身のメールアドレスに送信して、秘密情報を外部に漏えいさせました。これが契機となり、2021年に「不正競争防止法違反」で逮捕されました。
会社の情報セキュリティを管理するチームは、社員が退職する1ヵ月まえくらいから、機密情報へのアクセスが頻繁になるなど、妙な動きをしていないかを監視することが必要なんだと思います。
そしてなんらかの理由があって、退職する人は、退職をきっかけとして「秘密情報」を持ち出すことが、自分が想像する以上に大きな問題になることを知っておく必要があるのでしょう。