叡智の三猿

〜森羅万象を「情報セキュリティ」で捉える

当サイトは、アフィリエイト広告を使用しています。

ねえボス少しだけでもアップね 僕の給料

物価はあがっても、サラリーマンの給与があがらないという記事はよく見ます。

この根本要因は、日本企業の多重下請け構造にあると思います。これは、発注者から委託された業務が、元請け企業から二次請け企業、さらにその下層の企業に流れていく構造です。

IT業界はその典型だと思います。一見、先端をいき、華やかに見える業界です。でも、実態は少数のエンジニアを抱えた零細企業が乱立してます。それらの会社の多くは、自社で開発能力を持ってません。大手企業にエンジニアを常駐させることで収益を得てます。

多重下請けに於いて、各商流は上位会社からの月額の売上から一定の手数料を徴収して下位会社に発注します。下図はT君というエンジニアを抱える零細企業Mが、多重下請けの末端にあるモデルです。

仮にプライムベンダーが月額100万で発注して、各商流にて20%の手数料を徴収したと仮定します。そうすると、M社の売上は月額51万しかありません。

各商流での手数料徴収

その為、M社は月額51万で利益が出るよう、エンジニアT君の報酬を算定する必要があります。M社が20%のマージンを徴収したら、T君の月額報酬は約40万です。T君の年収は480万です。プライムにとっては、月額100万の価値がある仕事をしているにも関わらず、T君は年収480万円しかもらえないのです。


ボス ボス ボス
ボスの機嫌のイイ時に
おいらボスにこう言った
ねえボス 少しだけでもアップね
僕の給料

ボス そしたらボス
ボスの顔色にわかに曇り
ボスがこう言った
”俺の方こそ上げてもらいてえな ボーズ”
~「ボスしけてるぜ(RCサクセション)1980年」

日本の大半を占める、下請け中小企業の多くは余裕がありません。給料を上げたくても上げられないのが実情だと思います。

ただ、この実態は、内部不正による情報漏えいの要因になりえるので問題が大きいと思います。

激務の割に給与が少なく生活が苦しければ、社員は入手した秘密情報を売ってお金に変えようとする「内部不正の動機」を形成しかねません。

内部不正の理論で有名なのが「不正のトライアングル」という理論です。アメリカの犯罪学者ドナルド・クレッシー氏が提唱してます。

「不正のトライアングル」では、不正行為が発生する要因を「動機」「機会」「正当化」の3つの要素が成立することと説明しています。

不正のトライアングル

「動機」はプレッシャーとの関係が深く、不正を犯す必要性を指しています。単に給与が低いというだけでなく、生活苦から多額の借金を抱えたので、必要に迫られて不正行為を働いてお金を得ようとする心です。

「機会」は不正が発生する可能性のある状況を指しています。たとえば、金になりそうな設計図が簡単に手に届くところにあれば、それをライバル会社に渡してお金を得ようとする心です。

「正当化」は不正行為をを良しとする志向を指しています。たとえば、長年、忠誠心を尽くして働いた会社から突然、解雇を宣告されたらどうでしょう!?機密情報を持ち出すことに対する罪悪感は、薄れてしまうでしょう。

客先に常駐するエンジニアが、情報漏えいに関与した事件で、世間的な注目を集めたのは、2014 年 7月 に起きた「ベネッセ個人情報漏えい」です。

この事件は、ベネッセ子会社の業務委託先となるシステム開発会社の社員(システムエンジニア)が、顧客データにアクセスして、個人情報を名簿業者に売却していたというものです。動機はギャンブルと家族の入院に伴う借金とされてます。

エンジニアは顧客情報システムの開発に関わっていました。かなりのベテランで、顧客情報に対する正当なアクセス権をもってます。

社員は所有する個人のスマートフォンを業務用パソコンにUSBで接続し、顧客情報を不正に抜き取ってました。周りからみると、その行為はスマホに電源補充をしているように見えたと思います。

結果的に、エンジニアは不正競争防止法違反(営業秘密の複製)の罪に問われることになりました。

内部不正の動機は、外的要因によることが多く、改善が困難とされてます。

ただ、定期的な1on1ミーティングを実践したり、社員同士のコミュニケーションを促進するような職場環境にすることは効果があると思います。不安をひとりで抱え込まないような施策が必要だと思います。