叡智の三猿

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ヒットするための答えは、様々ある

サイゼリヤの会長(正垣泰彦)は、Sommelierという機関紙のインタビューで次のような、安さと美味しさに対する哲学を話してます。

「安くて、おいしいものを食べると、体も頭も満足する。迷いがなくなると、人は友達や家族に悪いことをしてきた過去を反省する。素直になれるんです。これが、高くておいしいと、反省できない。だれが支払うかが気にもなる。そうした幸せを提供するために、店を増やしてきたんです」
~Sommelier(2018年)

実際、サイゼリヤの料理は安くて美味しいと思います。

わたしの同僚にワインに相当なこだわりがある人がいるのですが、彼もサイゼリヤのワインに一目置いてます。つまみに「エスカルゴのオーブン焼き」や「ムール貝のガーリック焼き」など、ワインに合う料理も充実してしかも安いことに感嘆してます。

一般的なワイン酒場だと軽く5000円は超えるであろうメニューを注文しても、サイゼリヤなら2000円で済む算段です。

毎日、酔っぱらっても財布にやさしいお店です。

サイゼリヤを評価する一方、あらゆるお店がサイゼリヤを目指すことは無理なんだろうと思います。

安さと美味しさは、本質的には相対するものです。実際には美味しい料理を提供するには、ある程度の価格を設定しなければ、採算が合わないと考える経営者が殆どだと思います。

思えばバブルの頃は、味は二の次でした。内装がやたら豪華なお店が多くありました。もちろん、値段はお高めです。

彼女をマイカーに乗せた彼は、さっそうと、都心のイタリアンに向かいます。店の扉をあけると、キャンドルが灯された空間が広がります。店内はほのかな薔薇の香りに包まれてます。ソムリエが注いだワイングラスを片手に、彼女の目を見ながら、彼は「夜空に輝く星のようだね」と、ささやきます・・・。

そんな光景が日常に存在するのは、30年以上前に終わっている気がします。

きっと、あの頃の方が、お店の経営は、楽だっただろうなと思います。

ムール貝のガーリック焼きは、イタリアンでは、よく見られるメニューのひとつです。

仮にその原価が240円だとします。飲食店では原価率は30%というのが通例ですので、トラットリアに分類されるお店だと、800円くらいが提供価格になるでしょう。リストランテのような高級店ですと、料理を提供するための演出も違ってくるはずです。立地もリストランテに相応しい場所を選択するはずですので、単品で2000円は超えそうです。

原価から積み増しをすることで、メニューの価格を決定する方式は多くの飲食店で採用されてます。

しかし、サイゼリヤの場合は、まず「安いと感じられる価格」ありきというのが、哲学です。ムール貝のガーリック焼きなら、 400円です。これは、一般的なトラットリア店で提供される商品の半額くらいだと思います。

そうすると、400円の販売価格から逆算して、利益が出るよう、価格の構成要素を見直す必要があります。原材料の調達から、調理と料理の提供に至るすべてのサプライチェーンのプロセスで、最適化が求められます。もちろん、廃棄を無くす提供の仕方を構築する必要があります。単に「安い」だけでなく、「美味しい」を確保する必要があるので、そう簡単ではありません。

飲食業界は多数の中小企業が集結してます。飲食店の開業は、食品衛生責任者資格を取得し、保健所の営業許可を得るだけで良いので、参入障壁が低いからです。厨房機器もリースや中古を使えば、初期コストを下げることも可能です。スタッフもアルバイトが多いので、人件費も他の業界に比べると低めです。

経営を科学的に管理しない会社は、売上やコストを正確に捉えることができません。サプライチェーンを管理するための正確なデータがなければ、コストの最適化を実現することはできないでしょう。

それでも会社は利益を確保しなければ生きていけません。

利益を確保するには、コストを最適化するよりも、マーケティングにより来店客を増やす施策を進める方が得策と考えます。

いまはSNS全盛です。

多くのお金をかけずともSNSを効果的に活用することで、人気店になることができる可能性があります。料理の見た目がよければ、それをスマホカメラに収めて、インスタでシャアすることは広く行われてます。

消費者のインスタ投稿に共感した別の消費者が来店し、その消費者もインスタに投稿します。こうしたSNSの投稿を通じて、お店に対する消費者の信頼の輪が広がっていく顧客獲得のマーケティングをSIPSモデルと呼びます 。

SIPSモデル

たとえ、個人経営のお店でも、こういうインスタ映えする強力な商品があると、消費者のSNSによる口コミ効果が得られる可能性があります。

SIPSモデルは、予算の限られた個人店や中小店にとって、理想的な集客モデルだと思います。お店の提供するサービスに満足した顧客が、他の人に自然にお店の素敵な情報を共有してくれます。店にとって、持続的な宣伝効果を得ることが期待できます。

サイゼリヤのような科学的なコスト管理を徹底することで繁盛するお店になる方式がある一方、消費者の共感を得るような料理やサービスによって繁盛する方法もあります。

ヒットするための答えは、様々あることを飲食業界は、教えてくれます。