叡智の三猿

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商店街で買い物をする

わたしは幼少期だった1970年代、駅から歩いて20分くらいにある団地に住んでました。

駅から団地までは商店街があります。当時はとても賑わってました。

昼の商店街は母子連れや、お母さん買い物客が、八百屋さんだったり魚屋さんにいて、店の人と声をかけあってました。子ども同士はおもちゃ屋さんでプラモデルを選んだり、本屋さんでマンガ雑誌をパラパラめくって時間をつぶしてました。

夜になると商店街の様子は変わります。

キャバレーや風俗店の看板がキラキラと光り、そこは絶対に子どもが立ち寄れないお店です。路面脇の炉端焼き屋さんでは、スーツを脱いだサラリーマンが肩を寄せ合いながら、酒を酌み交わしてました。

駅前の学習塾に通っていたわたしは、そんな夜の商店街を「ジュニアスポーツ車」と呼ばれた自転車に乗って、す~と通り過ぎていきました。

明るいお店と怪しいお店が、一本の道沿いに隣接してます。その光景は不調和ですが、それぞれのお店が、それぞれの役割を果たしながら、街全体の活気を演出していました。

いま、わたしの住むところ(港北ニュータウン/横浜市)は、歴史の浅い町です。駅前には大規模なショッピングセンターが3軒あります。しかし、商店街と呼ばれるような街並みはありません。

昭和は、地元の商店街が地域の生活の中心でした。多くの小さな個人商店が軒を連ねていました。しかし、いまは大型ショッピングセンターや、コンビニなどのチェーン店の進出で、個人商店を中心とした商店街の多くは衰退してます。

比較的、最近出た絵本で「ようようしょうてんがい(福音館書店)」という作品があります。

この絵本は、言葉が韻を踏み、声を出しながら、読むとラップ音楽のリズムが耳に入ります。

活気ある商店街の雰囲気が絵と言葉で伝わる、なかなかの良作ですが、ある意味で消えてしまった「昭和の幻想」を再現しているシニカルな作品にも感じます。


きたきた ようようしょうてんがい よってらっしゃい みてらっしゃい
わいわい にぎわい きょうは どよう レッツゴー かいもの いってみよう
~「ようようしょうてんがい(福音館書店)」より

顧客情報を収集する目的を考えると、大型のショッピングセンターやチェーン店は優れています。特にBtoCマーケティングに於いては、以下の情報が必要です。

  • 顧客の個人情報:氏名、年齢、性別など
  • 顧客の購買履歴:購買頻度、購買金額、購買商品など
  • 顧客の購買特性:キャンペーンに対する反応など

個人商店では、こうした情報を収集しても、絶対数が少なく、部分的な情報しかありません。

多くの客が利用するショッピングセンターやチェーン店であれば、POSレジを通じた大量の顧客情報から、解析ツールを用いて、消費者の購買行動を理解し、会社としてどの市場にターゲットを置くべきかのシナリオを描くことが期待できます。

しかし、そんな期待とは裏腹に、いまの大型ショッピングセンターは、非常につまらない印象を抱く人も多いと思います。

大型ショッピングセンターは、市場を絞りながらも、幅広い顧客層に対応する必要があります。そのため、一般的な好みに合わせたコンセプトを選択します。地域やその町の歴史・文化的な特徴が希薄になる傾向があります。

大型ショッピングセンターが並ぶ駅前は、どこも同じ雰囲気が漂います。顧客はあえて店に入らずとも、そこでどんな体験が得られるのか、想像できてしまいます。

大量の顧客情報を集中的に管理し、顧客の好みに合わせた品ぞろえと、店舗空間の演出をすることが、かえって顧客離れを起こすのはシュールな気がします。

IT化を進める企業では、これまで運用してきた「密結合」なアーキテクチャーから、マイクロサービスによる「疎結合」な状態へ移行していくことに取り組む動きが広がってます。

たとえるなら「密結合」が大型ショッピングセンターやチェーン店であるのに対して、「疎結合」は商店街を形成する個人商店です。「疎結合」はシステム用語ですので、それがそのまま小売店のビジネスに置き換えられるわけではありませんが、根本の考え方は共通に思えます。

「疎結合」は、マイクロサービスと呼ばれるモジュール化されたサービスの組み合わせで構成されることに由来します。マイクロサービスを個人商店に置き換え、組み合わせは商店街に置き換えられます。「疎結合」なアーキテクチャーによって、たとえば障害が発生しても、障害の原因となったサービスだけ、全体から切り離して入れ替えるといったことができます。そのため、システム停止のリスク軽減が可能です。

そして、新たなビジネスプロセスをサービス単位で導入できることで、変化への適応性を向上させることができます。それは個人商店の経営者の老齢化に伴い、新たな若い人が店舗をリノベーションすることで、サービスを継続するイメージです。

「疎結合」の考えを商店街にマッチさせれば、幻想だと思っていた「ようようしょうてんがい」は、令和に蘇るかもしれません。