センター北駅(横浜市・港北ニュータウン)周辺にあるお店で、いちばん有名なのは「くじら軒」でしょう。
くじら軒はラーメン屋さんです。サンヨー食品からカップラーメンまで販売されるほどの人気店です。
くじら軒がオープンしたのは1996年です。
その当時、わたしは港北ニュータウンのお隣、宮前区に住んでました。
くじら軒の人気は、となり町にも伝わっていました。何回か、くじら軒までラーメンを食べに行こうとドライブしました。
くじら軒の前は区役所通りという広い道があります。店の前の道路わきには何台もの車が停車してました。そして、ラーメン店はいつも長蛇の列をなしてました。
結局のところ、ここでラーメンを食べるのを諦めました。でも、ラーメンは食べたいので、くじら軒から比較的近い家系ラーメンで済ませることもありました。
横浜というと家系のイメージが強いと思います。家系ラーメンは、豚骨醤油の濃厚なスープと太麺が特徴です。
くじら軒の特徴は、家系ラーメンとは真逆です。薄口醬油の細麺がウリです。店の券売機には濃口醤油のメニューもありますが、くじら軒を有名にしているのは薄口醤油です。
なかでも一番人気は、このパーコー麺(1250円)です。パーコー麺ですので、豚肉の揚げ物が入ってますが、スープがあっさりし、麺もつるんとしているので、胃にもたれる感じはしません。
くじら軒はいまも人気店です。でも、かってのように連日長蛇の列をなすことは少なくなりました。
くじら軒の行列がすごかったのは、開店した1996年から2000年代のはじめあたりです。
港北ニュータウンの街が完成形を迎えたのは、2007年に大型ショッピングセンターの「ノースポートモール」が開業したときです。港北ニュータウンの発展と反比例するように、くじら軒はかっての勢いを失っているように見えます。
お店が勢いを失っているのは、味が劣化したからではありません。いまでも充分に美味しいラーメン屋さんです。食べログの高い評価も、それを裏付けしてます。
くじら軒が長蛇の列をなしていたときの港北ニュータウンは何もない街でした。
港北ニュータウンにはセンター北とセンター南という、街の核となる駅がふたつあります。90年代、両駅は特筆するべきお店がありませんでした。わたしは、駅名の「センター」というのは、巨大な物流倉庫がそこにあるんだろうと、勝手な想像をしてました。物流センターであれば、一般人には用のない施設です。駅が閑散としていてもなんら不思議ではありません。
あの頃の「くじら軒」は、ただただ広い道路わきにある何もない街にある美味しいラーメン屋さんでした。それ自体、希少です。そして、横浜には星の数ほどある、家系ラーメンとは一線を画してます。それも希少です。
くじら軒は、複数の希少性によって生まれたブランドだと思います。
これは「希少性の原理」と呼ばれる、心理学の言葉で説明できます。
「希少性の原理」とは、人々が何かが希少であると感じると、その価値が高まるという心理現象を指します。希少性の原理は、アメリカの心理学者「ロバート・チャルディーニ」が提唱した「説得力の6原則(下記)」のうちのひとつです。
- 返報性
- コミットメントと一貫性
- 社会的証明
- 権威
- 好意
- 希少性
希少性の原理は、商品やサービスのセールスやマーケティングで利用されています。例えば、限定版の商品や数量限定のセールなどは、希少性を強調することで消費者の興味を引き、需要を高める効果があります。また、需要が高まると価値も高まるため、希少性は価格設定にも影響を与える場合があります。
また、経済学における希少性は、需要と供給の法則を築きます。希少性は限られた資源の配分や経済政策の検討に影響を与えます。
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希少性によって、ブランドを築いた「くじら軒」はかっての勢いを取り戻すことは出来ないのでしょうか?
わたしはもう少し、いまの状態を維持すれば、再び勢いが戻ると思います。
それは「老舗」という新たなブランド価値です。
港北ニュータウンは街自体が新しいので、まだ「老舗」いう概念はありません。
でも、30年くらい、この地でお店を続けたら、街の老舗と呼ばれる存在になるかもしれません。
わたし達は、老舗という言葉に一種の権威を感じます。権威があれば、それを受け入れる心理をもってます。
くじら軒は1996年にオープンしているので、老舗までの道は、あと3年といったところでしょうか!?