わたしが新卒(1990年)で入社した会社は食品や薬品などを製造してます。
製造拠点は国内です。同じ品目を東西にある工場で生産してます。東日本では埼玉や山梨の工場で生産し、西日本では大阪の郊外で生産してます。
日本は東京と大阪を中心として、大量消費が見込める経済圏がふたつあります。工場が東西で分かれているのは、東京と大阪への物流コストを効率化するためです。
ただ、コストだけではないもうひとつの目的があります。
日本は震災が多いので、自然災害のリスクを軽減するための対策です。
食品や薬品は人が生きていくうえで必要不可欠なモノです。特に災害が起きた際、被災地にいち早くモノが供給できるようにすることは、企業の社会的責任といってもいいでしょう。
1995年に「阪神・淡路大震災」が発生しました。この地震は震源地の神戸がもっとも大きな被害をもたらしたのですが、大阪でも激しく揺れたようで、工場は操業停止になりました。
そのとき、通常では供給ルートして使わない、東日本の工場から関西にある物流センターまで出荷するような配送計画を組みました。また、モノだけでなく、被災地を支援するために山梨の工場から人も派遣されました。
日本の企業は、リスクマネジメントの一環としてBCP(事業継続計画)を策定しています。
2011年の東日本大震災を契機としてBCPに取り組む企業が増えました。
BCPとは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
気になるのは、日本の多くの製造業が2000年代に入って以降「ファブレス」を掲げ、さらに製造拠点を海外に移してきたことです。
ファブレス化によって、ルーティンとなる製造工程は外注化されます。そのため、会社は付加価値を生む商品の企画や開発に、リソースを集中して投入ます。
選択と集中は、ファブレスをするいちばんのメリットでしょう。
一方、ファブレスは外注する製造会社の能力に左右されます。もし、大きな自然災害が発生すると、原材料や部品の供給に狂いが生じ、サプライチェーンの断絶が起きやすい問題を抱えてます。
さらに海外に製造拠点を移したら、日本のモノづくりのノウハウが海外に流出します。品質のいいものを企画開発しても、海外の企業によって類似製品を製造されてしまう可能性があります。
そこまで海外の国の会社を信じられるのでしょうか!?
わたしが子どもの頃、社会の教科書で、日本は「加工貿易」を強みとしていることを学びました。加工貿易は、原材料を海外から輸入して、それを加工し、製品として輸出する貿易形態です。日本のように精密なモノづくりは発達しているが、資源が乏しい国で行われる形態として紹介されてます。
おそらくいまの日本にとっての「加工貿易」は死語です。
商品の企画はするものの、サプライチェーンから見ると、日本は極東にあるひとつの消費拠点でしかないように見えます。コックピットからサプライチェーンをコントロールしているが、実際のモノは遠く離れた場所にあるイメージです。
本来はモノづくりを得意としているが、自然災害が多い日本から見ると、「ファブレス」や「製造の海外移転」との相性は悪そうだと直感的に感じます。
サプライチェーンはコンピュータシステムなしに組むことはできません。
BCPは災害時に於いて、コンピュータの安定稼働をはかることを目指します。
そのための、障害対策(フォールトトレランス)を検討しておくことが必要です。
大きな地震が特定の地域で発生した場合、そこにある機器が一斉に使えなくなる可能性があります。そこで距離の離れた別な場所にバックアップ用の機器を保管しておくことで、障害への対応をすることです。
システムの機器や系統を2系統(現用系と待機系)として稼働させるシステムをデュプレックスシステムと呼びます。
系統の切り替え方式としては、ホットスタンバイ、ウォームスタンバイ、コールドスタンバイがあります。
方 式 | 説 明 |
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ホットスタンバイ | 待機系も現用系と同一プログラムとして、あらかじめ起動する。現用系が故障したら、即座に切り替えて処理を続行する。 |
ウォームスタンバイ | 待機系のOSは起動するが、プログラムは現用系と同じではない。現用系が故障したら、現用系のプログラムと合わせ待機系に切り替えて処理を続行する。 |
コールドスタンバイ | 待機系の電源はOFFとする。現用系が故障したら、待機系のシステムの電源を入れ、現用系のプログラムと合わせ待機系に切り替えて処理を続行する。 |
災害にそなえ、バックアップサイトを使った訓練をする会社もあります。