小池百合子さんの再選で無風と思われていた都知事選ですが、蓮舫さんが立候補したことで風が舞ってます。
わたしは都民ではないので、選挙権はありません。外野にいますが、どっちが勝つかには関心があります。
小池さんと蓮舫さんの間には、人間関係のしこりがあります。
2017年、東京都知事の小池百合子さんは希望の党を結成しました。
このとき民進党の前原誠司代表は、党執行役員会と常任幹事会で、衆院選に向け、希望の党に合流する方針を示します。
しかし、小池さんは民進党からの合流に際して「踏み絵」を提示しました。
小池さんは、憲法や安全保障に関わるリベラルな思想を「排除」すると表明します。
当初は民進党の全員が希望の党に合流すると考えられてました。突然、ちゃぶ台がひっくり返された状況になりました。
リベラルな考えを持つ民進党の議員の一部は、希望の党への合流に反対します。
そして枝野幸男さんを中心に、立憲民主党を設立するきっかけとなりました。
蓮舫さんは言わずと知れた立憲民主党の中心人物のひとりです。
蓮舫さんは戦略的に離党してますが、わたしにはかって、小池さんが排除した集団が、7年あまりのときを経て、逆襲を企ててるように見えます。
ですので、わたしは今回の都知事戦を「保守」と「リベラル」の争いとは見てません。
排除された側が、排除した側を排除する「復讐劇」です。
今回の都知事選に関しては、蓮舫さんが立候補を表明するまえに、気になる出来事がありました。
広島県の安芸高田市の市長の石丸伸二さんが立候補したことです。
安芸高田市は母の実家があります。そのため、わたしも多少の知識があるのですが、大した産業のない過疎の地方都市です。
この町の唯一の特徴は「神楽」です。
「神楽」は全国に広がる伝統の秋祭りです。ただ、この町から「新作神楽」が多く生まれました。そして、いまでも「神楽」が盛んに行われていることが特徴的です。
「新作神楽」が生まれた背景は戦後のGHQによる日本進駐です。
GHQは芸能の実演に際して、検閲を行いました。
神楽はその内容に神国思想が強く出てます。そのため、GHQの検閲許可が得られないと考えられてました。
そこで、この町では神楽の神国思想が出ている部分を消し、派手な舞踊的要素を追加しました。
こうして生まれた「紅葉狩」などの新作により、神楽は伝統行事的な意味合いから、客を呼ぶためのエンターテイメントになりました。
市には「神楽ドーム」という、神楽専門の巨大な集客施設があります。
広島の中心部から「神楽ドーム」へのアクセスは悪いのですが、それなりに多くの観光客が見物に来ると聞きます。
これをブランドマネジメントの観点に立つと、商品(ここでは「新作神楽」)だけが優れているのではありません。商品をブランド化するには、ストーリーも重要です。
単に客を呼ぶために神楽の演出を派手にしたというストーリーでは、魅力を感じません。
「GHQからの検閲を逃れるために、伝統行事を改訂することで、伝統を守ったうえ、そこに新たな魅力を加えた」というストーリーがブランドを生みます。
さて、そんな神楽以外の目玉がない過疎地の市長が、都知事選に立候補したことにちょっと驚きました。
石丸さんは、小池都政の「何か」に課題を感じ、立候補したと思います。ただ、それが「何か?」というのが、イマイチ分かりませんでした。
何故なら、東京は安芸高田市とは、まったく事情が異なります。
東京に対する評価は、人それぞれだと思いますが、客観的に考えると、東京は日本でいちばん潤っている最強の自治体です(一強といっていいかもしれない)。
ですので、論理的に考えると、小池都政を変える必要性をあまり感じません。
小池さんと石丸さんの対決だと、両者には感情的なもつれはありません。あくまで、政策的な論理と論理の戦いになります。
だから、石丸さんの立候補は、微風だと思いました。
小池さんが結局は続投という流れに落ち着くと思ってました。
そこに割って入った蓮舫さんです。
蓮舫さんが持つ小池さんへの感情をむき出しにした「復讐心」がどこまで、有権者の共感を集めるかは見ものです。
感情と論理は、相互に作用しあって、わたし達の行動を決定します。
その際、一般的な傾向として、論理より感情を優先する人が多いと言われています。
長期的な計画を立案したり、複雑な問題解決を必要とするテーマでは、論理的思考が非常に重視されます。
しかし、わたし達の日常生活は、感情に基づいて、素早く決断を下すことの方が多いと思います。
「感情」は「論理」よりも強いと考えるべきでしょう。
逆にいえば、人間の「感情」をコントロールすることで、課題を論理的に解決できることもあります。
情報セキュリティでは、「抑止効果」という対策があります。
これは、悪意を持って情報を搾取しようとする攻撃者の感情に働きかけて、攻撃を抑止する対策です。
たとえば、システムの利用者に対してログを取得することを伝えるのは、利用者のプライバシーを尊重するうえで非常に重要です。
しかし、ログの取得条件を細かく伝えることで、悪意のある攻撃者がその情報を利用して回避策を講じる可能性があります。
そこで、利用者には、ログの取得に関する基本的な情報(収集するデータの種類、目的、保存期間)を伝えるものの、詳細な技術的仕様や、条件は公開しないようにします。これにより、利用者のプライバシー保護と、透明性を維持しつつも、攻撃者が回避策を見つけるリスクを低減する施策があります。
ログ取得の細かな条件までを開示しないことで、攻撃者の感情に不安を与えてます。
それが攻撃の自制につながるのです。