叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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社内SEは出世できるのか

100人以上社員がいる会社であれば社内の業務がシステム化されていて、社内システムを保守する専門チームがあるはずです(情報システム部門と呼ばれます)。もちろん、100人に満たない会社でもシステムやパソコンの面倒を見る人はいます。ただ、それが組織化されてるケースは少なく「ひとり社内SE」状態であることが多いと思います。社内SEを希望する就活生が目指すのは、ちゃんとした情報システム部門がある会社でしょう。

情報システム部門は経理部門や人事部門と同様、会社の間接部門です。間接部門は、会社の売り上げに直接影響しない部門です。売上・利益に直接影響する(直接部門)である営業や開発・製造部門の業務をサポートする役割です。バックオフィスとも呼ばれます。

残念ながら会社の情報システム部門の評価はあまり高くないようです。情報システム部門は経理や人事と同じ間接部門ですが、それらの部門より評価が低いと感じます。ヒト、モノ、カネ、情報は経営の4大資源と言われます。ヒトを扱う人事部門、モノを扱う直接部門(営業や製造)、カネを扱う経理部門と比較すると、情報の価値はまだ低いようです。

たとえば、店舗を出店する会社の多くは、顧客管理システム(CRM)を導入しています。会社がCRMを導入する目的は、店舗を訪れる顧客にポイントを付与することで、ポイントに応じた割引や特典を与えることで、顧客を囲い込むことです。一方、顧客情報を地理情報システム(GIS)と連携させると、店舗の商圏を視覚的に把握できます(下図)。地形を見ると住民がどのようなルートを通って、店舗を訪れるかを想像することができます。エリアマーケティングによりどの場所に出店をすると効果的かを考える材料になります。

CRMとGISの連携によるエリアマーケティング

CRMを導入する企業は多いのですが、GISと連携させて顧客情報を多角的に分析する会社はまだ多くありません。マーケティングに携わっている人であれば、顧客情報の多角的な分析を要望しているかもしれませんが、経営層はそこまで情報への感度が高くありません。

情報システム部門は会社のパソコンの管理をする部門だな。

その程度の意識しかない経営者のいる会社ですと、情報システム部門の地位は向上しません。

これは経営者の資質が低いからというより、情報システム部門の体質そのものに問題があります。情報システム部門はコンピュータシステムの維持管理を担っていますが、コンピュータに意識を向けることに気を取られすぎています。会社で管理している情報を経営戦略・事業戦略にどう活用するべきかを経営層に訴えることが出来ていません。情報システムの部門長自身が経営者の目線で言葉を語れなければ、情報システム部門の評価が高くなるはずはありません。

もちろん、情報システム部門への期待が大きな会社もあります。せっかく社内SEとして働くならそういう会社に入社したいものです。

会社に於ける情報システム部門の価値をはかるうえで参考になるのが、その会社がCIOを設置しているか否かです。CIOは、Chief Information Officerの略で、最高情報責任者と訳します。会社の情報戦略における最高責任者であり、役員に位置付けされます。CIOは情報システム部門で働く社内SEが出世したときのゴールというべきポストです。ただ、他部門の人材がCIOになる会社もあるのですが、そういう会社はCIOを名誉職に位置付けている可能性があります。ITを志す学生が夢をもって就職すべき会社は、情報システム部門の出身者がCIOを担っている会社でしょう。

会社の情報戦略は「情報を有効活用するための戦略」と「情報活用のリスクマネジメント」に大別されます。CIOが両者を統括するのはかなりハードです。そのため「情報活用のリスクマネジメント」は、CISOという別な担当に担わせる会社もあります。CISOは、Chief Information Security Officerの略で、最高情報セキュリティ責任者と訳します。CIOと同じくCISOも役員クラスですが、CIOよりは下のポストとなるため、執行役員や部長クラスが担うこともあります。

CIOが会社の情報戦略を考える際、そこに潜むリスクをCISOが提示し、必要となる情報セキュリティ対策の予算を確保する会社は、情報リテラシーの高い会社と判断できます。

ただ残念ながら、日本の会社でCIOを設置している割合は10%少々に過ぎずまだまだ発展途上です。DXの波が来ても依然として会社の情報システム部門の価値を高めていないことが、グローバル経済の中で日本企業の衰退につながっているように思います。