光化学スモッグと三元触媒
小学校に通っていたころ(1970年代)、地元の相模原(神奈川県)はしばしば光化学スモッグに覆われていました。外はうっすらと白いもやに覆われた景色となり、目がしみるような不快感がありました。光化学スモッグ注意報が発令されると、外から住んでいる団地にアナウンスが聞こえてきました。
光化学スモッグの主な原因は自動車の排気ガスに含まれる一酸化窒素(NO)です。自動車から排出された一酸化窒素は空気で酸化(NO2)されますが、紫外線で光化学反応を起こし再び一酸化窒素(NO)とオゾン( O3)を含む毒物になります。暑い日に光化学スモッグ注意報が多かったのは、太陽の紫外線が強いからです。
光化学スモッグは自動車という当時の文明の利器がもたらした負の産物です。
いまでも自動車は街中に多くは知っていますが、光化学スモッグ注意報は激減しました。
多大な役割果たしたのが触媒です。
※触媒についてはこちらの記事をあわせてみていただけると嬉しいです。
www.three-wise-monkeys.com
自動車の排気ガスは、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)からなる三元触媒(すべて高価な白金族!)により、有害物質である窒素酸化物(NOx)や炭化水素(HC)を無害な窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)、水(H2O)に変化させます。
三元触媒は自動車の排気ガスによる大気汚染問題に画期的な効果をもたらしました。
ガソリン車から電気自動車への転換
1年以上前の話ですが、当時の菅総理大臣は2021年1月の施政方針演説で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明しました。これは、2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの実質排出ゼロをめざす取り組みと連動した表明です。
response.jp
自動車による大気汚染の問題を画期的に解決した三元触媒ですが、二酸化炭素の発生を抑えるものではありません。そもそも二酸化炭素は大気のなかの有害物質であるという前提にはたっていません。二酸化炭素によって植物は光合成を行い、地球に酸素を供給しています。二酸化炭素は植物の栄養源であり、酸素を生み出すために必要な物質です。
二酸化炭素は地球温暖化問題の原因ですが、公害問題においては原因としてとらえることはありません。このあたりが地球温暖化問題と公害問題の微妙な関係を示していると思うのですが、ともあれ、ガソリン車を電気自動車に転換するべき根拠として、温室効果ガスによる地球温暖化問題を取り上げたのです。
わたしはこの記事をはじめてみたとき、こう思いました。
もしも、いまが1970年代であったら、電気自動車はもっと普及していただろうな~
光化学スモッグによる大気汚染は、目がしみたり、のどが痛くなったりと、わたしたちの健康に明確な悪影響を及ぼします。そんななかで、電気自動車が登場したら、価格帯にもよりますが、多くの人がガソリン車から電気自動車にシフトするはずです。大気汚染に比べると、地球温暖化問題は、わたしたちの健康にどのような悪影響を及ぼすのかがよく分かりません。確かに気温が異常に暑い状態が続くと、身体がだるくなったり、熱中症にかかりやすくなったり、マラリアなどの感染症への不安はあります。しかし、それが大気汚染より憂慮するべき問題なのかと問われたとき、確信をもってとは言えないと思います。いや、そもそも地球温暖化問題の原因となる二酸化炭素が地球からなくなったら、生態系そのものが壊滅するのですから・・・。
ですので、ガソリン車を電気自動車に転換する根拠として、地球温暖化問題を取り上げるのは、やや説得力に欠けると思うのです。
むしろ、大気汚染とならぶ公害問題として騒音問題を取り上げた方が、効果的だと思います。ガソリン車はエンジンを駆動させる際の振動が騒音になるので、運転する人はそれを快適と感じる人もいるようですが、はた目には迷惑です。電気自動車はモーターのみで走行するので、ガソリン車のような振動による騒音が全くありません。
自動運転車の脅威
電気自動車はガソリン車による公害問題を解消する手段ですが、それによるメリットもあれば新たな脅威もあるでしょう。わたしが気になるのは、電気自動車の普及とともに促進するであろう自動運転についてです。自動運転はガソリン車でも装着は可能ですが、制御面で電気自動車の方が有利ですので、電気自動車の普及は自動運転の普及と歩調をあわせると思います。
自動車事故の多くは運転ミスなので、自動運転は安全性を高めることに大いに貢献するはずです。
しかし、自動運転車は常時通信を行っているので、通信やソフトウエアに対するサイバー攻撃が脅威となります。車は身体と密着しているので、電気自動車が攻撃者に手により通信がハッキングされ、ソフトウエアが改ざんされたりすると、車に乗っている人や、周囲の人に命の危険性があります。
情報セキュリティでは、CIAと呼ばれる3要素を維持することが重要とされます。3要素とは、情報の機密性、完全性、可用性のことです。
もちろん、CIAは重要でセキュリティ対策を実施するべき要素なのですが、命に直結する要素ではありません。自動車へのサイバー攻撃対策は、CIAよりも深刻な安全性を維持することが命題です。