叡智の三猿

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手のひら

今回のシリーズでは「カンニング」をネタにつらつらと書いているのですが、改めてわたしの学生時代といまではカンニングの方法が変わったことを実感しました。

わたしの青春時代はスマホはもちろん、携帯電話もありません。外部とは通信ができない試験会場で、できるカンニングは限られています。

一般的?なカンニングはとなりの生徒の答案用紙を覗く方法でした。

となりの答案をのぞき見

しかし、このカンニングはとなりの生徒が自分よりも頭がいいことが前提です。当たり前のことですが、自分より学力の劣る生徒の答案用紙を覗くメリットはありません。そんなことをして、カンニングをしている場面を試験官に見つかったら、厳罰です。全く割にあいません。

ですので、ある程度、勉強のできる生徒がするカンニングは、消しゴムに情報を記録するか、手のひらに情報を記録するか・・・くらいでしょう。

消しゴムに情報を記録するメリットは、試験官が近づいたら、消しゴムカバーで書いた情報を覆いかぶせられるので、見つかりにくいことです。消しゴムに直接文字を記載するのではなく、小さな紙に情報を記載し、カンニングペーパーとして消しゴムに忍ばせる方法もあります。

下図は現物大の消しゴムに室町時代の情報を記録したイメージです。消しゴムに記載できる情報量は非常に少なく、小さな文字にして情報を多く書いたところで、どのみち大した情報量にはなりません。この程度の情報量であれば、試験直前に頭に記憶した方が、はるかに効率的です。消しゴムを使ったカンニングは、見つかるリスクは低いかもしれませんが、なんの効果も期待できません。

消しゴムに記録

一方、手のひらは、消しゴムに比べはるかに多くの情報を記録できます。字の大きさにもよりますが、消しゴムの5倍は記録できそうです。定期試験のような試験範囲が限られたテストであれば、高得点を狙えるかもしれません。

しかし、手のひらを使うカンニングは危険です。試験中、ずっと手のひらを見るのは不自然です。生徒は試験官の視線を気にしながら、机のうえに手のひらを置いたり、グーにして情報を隠したりします。そうすると手を自由に使えず、ストレスを感じます。答案用紙に答えを書くのも苦労します。人は精神的に不安、緊張、ストレスが起きると、手のひらに汗をかきやすくなります。手のひらに汗が出やすいのは、モノをつかむ際に、滑り止めの役割を果たしているからと考えられています。そうすると汗でせっかく書いた情報が消えます。汗は脂質を含んでいるので、油性ペンで書いても消えます。手のひらに記録する方法は、試験範囲が限定されていれば、一見効果が期待できそうですが、リスクの高すぎるカンニングです。

手のひらに記録

インターネットはカンニングのトレンド?を変えました。外部との通信によって、手のひらサイズの電子機器で欲しい情報を簡単に得られます。それまで、どちらかといえば、勉強のできない生徒が行っていた不正行為は、勉強のできる生徒にも広がりました。スマホは自分自身ですべての操作を行わなくとも、外部に協力者がいれば遠隔操作ができます。悪い知恵を使えば効率的で効果のあるカンニングができるようになりました。

また、いまはスマホが情報を得る手段の主役ですが、これからウェアラブルデバイスがもっと進化し、浸透します。身に付けている眼鏡、筆記用具、腕時計、衣服までが、単なるモノでなく情報機器として、カメラ機能を持った目として機能したり、外部と通信を行います。これは、試験官もチェックがしにくいと思います。

むかしといまでは、こんなにカンニングの道具が進化しているにも関わらず、その防止策は「試験に必要のない道具は、身体のそばにおかず、かばんなどにしまいなさい」という、生徒の良心に訴える注意喚起から変化がありません。

「生徒は監視が甘ければカンニングをする」前提にたった対策が必要なのでしょう。