叡智の三猿

~森羅万象を情報セキュリティで捉える~

ジャミング

前回のブログではいまの受験制度を偏差値でグループ化された大学から進路を選択するのではなく、将来なりたい職種から進路を選ぶような仕組みに変えるべきだと書きました。もしそれが実現したら、大学の入学試験でスマートフォンなどの電子機器を使ったカンニングのような不正行為は激減すると思います。

ただ残念ながら、受験制度が抜本的に変わることは無いと思います。受験制度に限らないのですが、日本人はすでに完成されたシステムを抜本的に変えることを嫌います。

カンニングは悪いこととは知りつつ、受験という極度のプレッシャーのなかでは、その常識が通用しないことが想定されます。極度のプレッシャーは、自分の行おうとする不正行為を正当化する解釈に走らせます。たった一度きりの大学受験の結果で、自分の人生が決まってしまうと思ったら、失敗は何としても避けなければなりません。たとえ不正行為をしても、合格できればいいと考えるかもしれません。

情報セキュリティで不正行為のメカニズムを考えるとき、よく取り上げられるのは、米国の犯罪研究者ドナルド・クレッシーの提唱による「不正のトライアングル」という理論です。その理論によると、不正が行われる条件は、機会、動機、正当化の3つの要因がそろった時に発生するというものです。この理論では、逆に3つの要因のいずれかを無くすことができれば不正は起きないとされます。

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不正のトライアングル
大学受験で考えると、受験制度を偏差値でグループ化された大学から進路を選択するのではなく、将来なりたい職種から進路を選ぶような仕組みに変えることが出来たらどうでしょうか!?必然的に入学試験の重みは低下します。なぜなら、いまの学校教育は志望する大学に合格することに重みを置いていますが、将来の職種から進路を選ぶのが当たり前になると、大学で専攻した分野で、いい成績をおさめて卒業することに重みが置かれるからです。どの大学にいくかは自分の専門知識を高めるための手段に過ぎません。大学入学試験の結果で自分の人生が決まってしまうというような、妄想に囚われることがなくなります。そうすると、受験のプレシャーから解放されます。

この状態を「不正のトライアングル」にあてはめると、不正行為の要因となる動機と正当化が無くなることです。カンニングをする動機がなければ、わざわざカンニングをして試験会場から退出させられることにはなりません。

しかし、現実の受験はよい成績で大学を卒業することより、より偏差値の高い大学に合格することが重視されます。不正行為の動機や正当化はなくなりません。

であれば、不正行為の3つめの要因である「機会」を無くすことに注力せざるを得ません。

機会とは不正が発生する可能性がある状況のことを指しています。試験でカンニングをしようと試みたら、それが出来てしまう状況が機会です。

カンニングの道具としてスマートフォンを使うことを受験生が考えることを想定すると、いまの試験で実施している下記の注意喚起だけでは甘いと思います。

  1. 携帯電話,スマートフォン,音楽プレーヤーなどの音の出る機器を全て机の上に出す。
  2. アラームを解除してから電源を切る。
  3. 電源を切った後、身に付けずにかばんなどにしまう。

この注意喚起を受験生が実施するかしないかは、受験生の良心に依存しています。しかし、カンニングをする動機や正当化を抱えた受験生に、そのような良心はありません。ですので、カンニングしたくても出来ないように対策をする必要があります。

効果的なのは空港での手荷物検査と似たようなことを試験前に実施することです。受験生は試験会場に入る際、事前に電子機器を取り出して、試験官の前で電源を切ってかばんにしまいます。そのうえで、試験官は受験生が電子機器を身に付けていないかを電磁波測定器で身体検査します。もし、密かにスマホを身につけていたら、電磁波を発信していますので、電磁波測定器が反応します。この時点でこの受験生はイエローカードです。

ただ、電磁波測定器は電源を切ったスマホには反応しません。試験官が身体検査をしたあとで、身に付けているスマホの電源を入れる強気?の受験生もいるかもしれません。

そこで試験会場には電波妨害機を設置して、通信ができないようにする対策を併せて実施するのがより効果的です。通信を妨害することをジャミングといいます。コンサートホールや映画館に入ると、スマホの電波が圏外になるのを経験した人も多いと思います。それは、劇場に電波妨害機が設置されているからかもしれません。試験と同様、劇場でスマホの電源を切るのは常識ですが、その常識を守らない人は少なからずいます。常識を守れない人がいると、演奏中に電話の着信音がなったり、会話したりと、周りに迷惑をかけます。その対策として電波妨害機を設置して、外部との通信を妨害するのです。
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ジャミングで通信を妨害できれば、試験中にスマホを使って、検索することも、問題用紙の画像を外部に送信することも出来なくなるので、不正行為の機会を除くことが出来ます。