叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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「イカゲーム」から学ぶ「Think Globally、 Act Locally」

韓国のテレビドラマ「イカゲーム」は、韓国ドラマとしては初めてネットフリックスで全世界1位を記録し、2021年最大のヒット作となりました。
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昨年、家族で楽しくこのドラマを見ました。

このドラマはいままでの韓国ドラマの延長ではなく、新たな方向性を示唆しているように思いました。

その方向性は3つのポイントです。

ひとつめはこのドラマが非常に短いことです。全9話で1話あたり、1時間もありません(第8話に至っては30分くらい)。韓国のテレビドラマは概ね、16話くらいは作られるのが普通なので、イカゲームは相当短い部類に入ると思います。この流れは、いま流行っている「今、私たちの学校は…」にも引き継がれています。

ふたつめはドラマに初めから入りこみやすいことです。韓国のテレビドラマは1話目から入りこむのが難しい作品が多い印象があります。4話目、5話目あたりから「面白くなってきた」と、感じることが多いのです。イカゲームは1話目から面白いので、韓国ドラマとしては珍しい部類だと思いました。

そしてみっつめは、韓国ドラマでよくある展開が盛り込まれていないことです。韓国ドラマを見ると、登場人物が話の途中で、交通事故にあったり、記憶を喪失したり、不治の病に侵されたりするなど、話を盛り上げる常套手段?が盛り込まれていることが多い印象があります。イカゲームは本筋のみを追っているので韓国ドラマらしくないと思いました。

この3つのポイントから、わたしは「どうしたら、短い話数で、多くの人が楽しめるか!?」を綿密に練ったと想像しました。

ドラマにはテレビで見るドラマと映画で見るドラマに大別されます。テレビの場合は話数が多いので、当然、鑑賞するトータル時間も長くかかります。同じく2021年に大ヒットした韓国ドラマ「ヴィンチェンツォ」は、1話あたり80分程度の作品が20話あります。ですのでトータルすると大体27時間程度の長さです。一方、映画は2時間から3時間程度で一回こっきりでみるものです。

イカゲームは全9話で合計すると498分です。約8時間。わたしはこのドラマを8時間で納めることに意味があったと思います。8時間にすることでテレビドラマのファンにも映画ドラマのファンにも見やすい時間になります。誰にとっても1日は24時間で、そのうち、8時間は睡眠や食事、残った16時間のうち、8時間は仕事や勉強。そうすると暇な時間が8時間できます。暇な時間でドラマを一気見することができます。

そして8時間のテレビドラマを制作するうえで、必要な手段が「1話目から入りこみやすくすること」と「記憶喪失などの韓国ドラマによくある展開を盛り込まないこと」だと思いました。韓国のテレビドラマが入りこみにくいのは、登場人物の人物設定がとても丁寧に描かれているからです。どういうことかというと、韓国ドラマに登場する人物は、主人公のみならず、脇を固める人物も表からは見えない、その人物の生い立ちや、抱えたトラウマ、生きていく上で背負った宿命のようなものが刻まれています。これはドラマに深みをもたらすうえで、重要なことだと思うのですが、わたしたち視聴者にとっては、登場人物の設定がはじめのうちはわからないことから、ドラマに入りこみにくい側面があります。イカゲームは登場人物の設定をシンプルにすることで、1話目から入りやすくするようにしています。また、韓国ドラマによくある記憶喪失や交通事故は、物語を長くするために使う常套手段ですので、8時間で納めるというイカゲームの戦略にはミスマッチだと思うのです。

すなわちイカゲームは、

「地球規模で多くの人が気軽に鑑賞できるドラマ」

です。

ネットフリックスで全世界で1位を獲得するのは必然性があったと思います。

いまの日本のテレビドラマは、面白いといえば、面白いのもあるのですが、地球規模で視聴されることを全く考えていないように思います。日本はテレビドラマの視聴率を左右するのは国内にあるテレビだけという事情があるからと思います。視聴率は視聴率調査会社が、調査協力を受けた個人宅に視聴率調査に使用する測定機を設置することではかります。ドラマの視聴率によってCMをやってくれるスポンサーが集まるので、テレビ局が気にするのは国内の視聴者のみということになります。

テレビドラマだけに限ったことではないのですが、日本の会社が提供する商品やサービスは、地球規模に流通させることをあまり考えていないように思います。内需中心のマーケティングです。

そして、このブログのメインテーマである「情報セキュリティ」においても、あまり海外を意識していないと思います。

企業が自ら管理するべきデータを日本国内にあるサーバーに保管することで、情報漏洩の脅威を国内の問題に限定しようとしていると思います。確かに国内でデータを管理することで海外からの攻撃による影響を軽減します。

情報セキュリティ対策は大きく4つの対策に分類されます。

対 策 対策の例
物理的対策 入退室管理、記録媒体の流出防止策など
組織的対策 セキュリティ管理体制、規定の整備など
人的対策 情報取扱者へのセキュリティ教育・監視など
技術的対策 アクセス制御、認証・認可、侵入検知など

国内にデータを保管することで、物理的対策、組織的対策、人的対策への効果はかなり期待できます。データが国内に保管されていれば、情報セキュリティのインシデントが発生した際に国内法で対応することになるので、海外にデータを保管するより安心もできます。ただ、それで安心しては問題です。サイバー攻撃は国内からのみ発生するわけではありません。セキュリティ対策の弱い拠点を狙った、サプライチェーン攻撃や、ランサムウエアによる金銭要求の脅しなど、海外からの攻撃は年を追うごとに深刻な課題になるはずです。海外からのサイバー攻撃を想定した技術的対策を強化するための投資をした方がいいと思います。

※サプライチェーン攻撃についてはこちらの記事も見てくれると嬉しいです。
www.three-wise-monkeys.com
※ランサムウエアについてはこちらの記事も見てくれると嬉しいです。
www.three-wise-monkeys.com

「Think Globally、 Act Locally」というフレーズがあります。文章で書くと「課題をグローバルな視点で考え、足元から行動をしましょう」という意味です。これは環境問題を語る際によく使われます。たとえば、地球温暖化は全世界で起きている温室効果ガスの増加によってもたらされている問題です。そのためには地球規模で温室効果ガスの発生を削減していく必要があるのですが、いまわたし達がやることは、使っていない部屋の明かりは消しておく、着なくなった服はリサイクルに回すといった行動をとることです。

「Think Globally、 Act Locally」は、環境問題のみならず、あらゆる課題を解決するための指針となる普遍的なメッセージだと思います。