サブスクが拡大しています。音楽、動画という馴染み深いサービスはもちろんですが、車、ファッション、食品、お花、教育、娯楽・・・あらゆる分野でサブスクサービスの参入が増えています。いま、まさに「サブスク全盛時代」の到来です。これにより、消費者の購買に対する価値観が「所有から利用へ」という流れが促進するとされます。
一方で、サブスクの拡大は知りつつ、メーカーに勤める知り合いのビジネスマンはこう言います。
サブスクはクラウドサービスを提供している会社の話だよね。ウチの会社はメーカーだから、あんまり関係ないかな。
サブスクはクラウドサービスに限定された話に留まることはありません。メーカーもよいモノを作っていればいいという発想から脱却しないといけないと思います。ただ、わたしはサブスクの拡大によって、消費者の購買の価値観がパラダイムシフト(所有から利用へ)を起こすとまでは思ってません。
その理由を2つ挙げたいです。
イビツなビジネスモデル
スマホショップでスマホの契約をした際、店員さんからオプションサービスの話をされた経験のある方は多いと思います。店員さんは、こんな感じの言い方をします。
今回、機種交換をされた方を対象に、〇〇オプションのご案内をしています。こちらは××というサービスでして、お申込から30日間は無料となります。ですのでその期間に解約をされれば、一切費用はかかりません。30日を過ぎたら月々、500円がかかります。
これはよくあるサブスクの勧誘です。サブスクは使ってみることろから始まります。はじめの一定期間を無料にすることも多いです。ただなら利用するハードルが下がります。このとき、利用者が無料期間の間で、サブスクを使い、継続するか、解約するかの判断をすれば問題ありません。しかし、店員さんから進められて、申し込んだけど、何をすることもなく、有償期間に入ることがあります。請求が確定した後、利用者は、先月よりも高い料金になっていることに気が付き、慌てて外す人もいます。「お金はかかららないから、入ってくれと言われた!」と、クレームに発展する可能性があります。さらに、使っていないが、利用料を払っていることに気が付かない人もいるでしょう。全くサブスクを利用をしないのに、利用料を払っている人は、顧客ではありません。確かに利用料を払ってはいるのですが、事業者にとって顧客とはサービスを利用している人です。事業者は、自分たちのサービスを改善する、努力をしています。その改善に役立つのが、顧客の使用頻度や、顧客からの評価です。インターネットを使ったサブスクサービスならば、DAU(Daily Active Users)が、使用頻度をはかる重要な情報です。DAUは1日あたりのアクティブユーザーです。特定の日に1回以上の利用があったユーザーの数を示します。
申し込んだけどサービスを利用していない人は、サービスの評価ができません。サービスの改善に役立たない顧客は、真の顧客ではないのです。本来、全く利用しない顧客は、解約を促すべきなのです。しかし、前回の記事で紹介したように、サブスクビジネスは、チャーン(解約率)を減らすことが重要です。下図のようにチャーンのありとなしで、事業収益は大きく変わります。
ですので、利用しない顧客を事業者は放置するはずです。「寝た子を起こすな」の論理です。毎月、お金は入るが、何も提供しないでいいというのは、事業者にとって美味しいビジネスともいえます。
しかし、そういうイビツなビジネスモデルは、ある程度まで拡大しても、爆発的な拡大にはなりません。
大切なものは「所有したい」
購買の本質は「所有」か「利用」か・・・そんなことを考えているとき、リビングの卓上カレンダーが目に留まりました。卓上カレンダーは、ヒョンビンの写真です。妻がヒョンビンのファンクラブに入会しているのですが、ファンクラブに入ると、年会費6,600円で、特典を受けることができます。
ファンはありがたい存在です。ヒョンビンのような大物俳優になると、ネットで海賊版のような写真や動画作品も買えるのですが、ファンはそういうものに手を出しません。なぜなら、海賊版を買っても、ヒョンビンにお金が入ることがないからです。
ファンがヒョンビンの関連商品や動画などのサービスを「買い取り」するか「サブスク」にするかは、購買の手段です。消費の価値観を語るものではありません。間違いないのは、ヒョンビンのファンは、ヒョンビンを「所有」したいとは思っても「利用」したいとは思っていないでしょう。サブスクが拡大しても、自分にとって大切なものは「所有したい」と考えるのが、人間の本質だと思います。逆に、あれば便利だが、無くてもいいものは「利用」を選択するでしょう。