消費者がサブスク(商品やサービスを一定期間、一定額で利用できる仕組み)を契約するかしないかの判断基準は「価格と利用頻度のバランス」でしょう。 わたしは、月額 ¥1,490(スタンダードプラン)で、Netflixと契約しています。月額固定ですので、動画配信を観ようが見まいが支払い額は変わりません。もし、週一しかNetflixの動画を観れないのであれば、コスパが悪いので、解約するでしょう。
わたしはNetflixで観たい韓流ドラマが山のようにあるので、これからも利用を続けます。ちなみにいま見ているのが、「Mine(マイン)」。まだ、4話しか見ていないのですが、ドロドロ・ハラハラ感な展開に期待!期待!です。
もし、消費者が「価格と利用頻度のバランス」以外で、サブスクを契約するか否かの判断基準があるとすれば「情報セキュリティ」に関わることだと思います。サブスクの仕組み上、利用者と手続きをする際に、個人情報(氏名、住所、性別、生年月日、電話番号、勤務先など個人を識別できる情報)の提供が必須となります。そして、サブスクによる、商品やサービスを利用することで、個人の行動特性、趣向性などのプライバシーに関わる情報が事業者に伝わります。
これを嫌だと感じる消費者は一定数いると思います。
たとえば、Amazonプライムは、年間 ¥4,900円の有料会員制サービスです。Amazonプライムに入れば、迅速な配送を受けたり、Prime Video、Prime Musicをはじめとするいくつかのサブスクがパッケージ化されているので、とても重宝しています。
そのAmazonプライムの水先案内人が、AIアシスタントであるAlexa(アレクサ)です。Alexaは、Amazonプライムと密接に連携しており、デジタルコンテンツを効率よく利用者に届けてくれます。
アレクサ、リラックスできる曲が聞きたい。
そうすると、Alexaはリラックス・ジャズステーションとかを案内し、マイルスデービスの曲を流したりします。ただ、利用者がAlexaに話しかけた言葉は、個人を特定しないよう一部を切り取って、人間が聞き、タグ付けやデータの意味づけなどを行っています。これは音声認識の精度向上を目的とした、文字起こしと呼ばれる仕事で、下図のように一般的な求人媒体を通じて、採用も行っています。
個人を特定しないよう細工をしても、プライバシーに関わる情報が、自分の知らないところで使われることに抵抗を感じる人がいても不思議ではありません。
サブスクを提供する事業者は、自分たちのプロダクトを改善していくべく、必死の努力をしています。何故なら、サブスクのビジネスモデルは売ることより、売った後で、利用者が長く使って頂くことに意味があるからです。
サブスクのビジネスモデルでは、チャーンとアップセルいう重要な指標があります。チャーンは「解約率」のことです。アップセルはより上位のサービスにアップグレードすることを指します。事業者にとってチャーン、アップセルを把握することは、自身が提供しているサービスの需要・満足度を知ることになります。チャーンが高いと、そのサービスが利用者の求めるニーズや課題がきちんと解決できていないことになります。事業者はチャーンを減らし、利用者に長く使っていくなかで、アップセルして欲しいと考えています。
下図は仮定をおいた売上シュミレーションです。スタート時を100として、毎月20ずつ売上が拡大しています。青い線はそれをそのまま5年プロットしています。オレンジは既存顧客のうち、チャーンが毎月2.5%発生しています。グレーはアップセルが毎月2.5%発生しています。グラフを見ると分かるとおり、チャーンがあるのと無いのでは、5年経過したときの売上規模に大きな差が出ます。これを見ると、事業者にとって、利用者の行動特性、趣向性の情報を把握することが如何に重要かが分かります。
このような背景から、サブスクのビジネスモデルは、利用者の情報を把握し、分析し、よりよいプロダクトにするべく改善に改善を重ねます。利用者にとっても、自分が利用しているサブスクのサービスが改善されるとメリットがあります。Alexaであれば、自分の話す言葉を正しくAIが認識して、適切な回答をしてくれれば、利用者はより早く、自分が望む情報にアクセスができます。
情報セキュリティの言葉の響きから、情報セキュリティというと、個人情報やプライバシー情報の漏洩を防ぐ「機密性」がイメージされると思います。しかし、利用者の要求する正確な情報を提供できる「完全性」も情報セキュリティに求められる重要な要素のひとつです。「機密性」と「完全性」のバランスをどう考えるかが、サブスクを選択する際の判断基準になるのでしょう。