叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

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「ユー・ガット・メール」の「ぴー、ぴゅるるる」

電子メールの転送は、むかしもいまも、日常的にビジネスマンは使っています。

カスタマーサポートの仕事をしている担当者であれば、毎日、いろいろな消費者から、商品やサービスに関する問い合わせのメールに対応します。消費者のなかには、やっかいなクレームをする人がいるでしょう。そんなとき、担当者は消費者からのクレームを上長に転送して、対応策を仰ぐことでしょう。

メールの転送機能は、報・連・相(ほうれんそう)の手段として手軽に使います。

現在の電子メールの受信プロトコルは、POP3若しくはIMAP4です。POPは受信した電子メールをメールサーバからパソコンにダウンロードするプロトコルです。いちどダウンロードすれば、インターネットに接続しないでもメールを読むことができます。IMAPは電子メールの一覧を取得し、本文はサーバ側に保存するプロトコルです。POPとは異なり、インターネットへの接続が必須です。メールを購読する端末が限定されないことが利点です。

POP3が商用で利用されるようになったのは1993年頃です。IMAP4はそれから数年後に使われるようになりました。

わたしが会社の業務で電子メールを使うようになったのは1996年からです。電子メールの普及期から利用しています。

当時、わたしは勤務先の会社の全従業員に「電子メールの業務利用を推進する」プロジェクトに参画していました。ですので、誰よりも率先してメールを業務で使っていました。

いま、仕事で電子メールを使うのは、当たり前のことです。しかし、当時は得体のしれないコミュニケーションツールとして、利用をためらう人が多かったのです。

用があるなら、電話して、必要なら会議をすればいいじゃないか!

こういう声を多くの方から聞きました。

1998年に「ユー・ガット・メール」という映画が公開されました。これは、メールで知り合った顔も知らない男女が、ネット上で恋をしているのですが、実は実生活でも知り合いで、そこではいがみ合っているとう、ロマンチックコメディの秀作です。

SNSが浸透したいまでは想像できないのですが、当時は電子メールを受信するのに、電話回線にパソコンを接続させ、モデムからプロバイダの接続先電話番号にダイヤルすることで、わずか56kbpsでネットに接続していました。

ネットに接続すると「ぴー、ぴゅるるる・・・」と鳴る電子音に、今回はどんなメッセージが送付されるのだろうかと、ワクワクした思い出があります。
youtu.be

この映画からも想像される通り、1990年代といまでは人と「電子メール」の距離感は異なります。

わたしは「電子メール」の業務利用の有効性を宣伝しました。そのなかで「転送」のメリットをこんな風にあげました。

報・連・相をするにあたって、注意するべきは、相手の仕事の状況を見計らうことです。相手が別な仕事で手一杯なとき、いきなり電話をして、仕事の相談をしても、まともに相談にのってくれない可能性があります。

仮に相手が相談にのってくれても、相談された側は、それまで別な仕事を行っています。それが電話によって突然、自分の仕事が中断されるのです。仕事が中断された状態から、元の状態に戻るまでに、相手はそれまでの思考を取り戻す必要があります。

電話は便利で即効性のあるコミニュケーションツールですが、とても乱暴な手段です。相当な緊急性のない・・・たとえば報告や連絡であれば、基本はメールで済ませましょう。相談についても、相手から回答を得るまでに、2時間以上かかっても差し支えのない内容であれば、メールで相談するか、他人から来たメールを転送することが、組織全体の仕事の生産性を向上させるのです。

電子メールの普及に当初は苦心しましたが、一度、電子メールの便利さを知ってしまうと、あとはとんとん拍子にメールの業務利用が進みました。

しかし、当初は想定していなかったメールの使い方を従業員はするようになりました。

それは自分が受信した仕事のメールをプライベートで所有しているメールアドレスに転送することです。

電子メールの転送を使うのは報・連・相の手段と想定していました。自分宛のメールを異なる自分宛のメールに転送することは想像しませんでした。

電子メールの業務利用が進むと、自分がするべき仕事をメールで確認するようになります。しかし、会社のパソコンで受信したメールは、POP3のプロトコルを使っている場合、会社のパソコンにダウンロードされます。ダウンロードされたメールは、そのパソコンでしか読むことが出来ません。定時後や土日に仕事をしたいとき、会社のパソコンを自宅に持ちかえるのは、手間がかかります。その為、会社のパソコンに蓄積したメールをプライベートなメールアドレスに転送して、自宅のパソコンでメールを受信するようにしたのです。

こうして、業務用の電子メールやそこに添付された文書を自宅のパソコンで確認することが常態化しました。

これは情報セキュリティ上、問題があります。

自宅のパソコンをインターネットに接続することにより、悪意をもった攻撃者や感染を試みるマルウェアがインターネットを経由してパソコンに侵入するかもしれません。

会社のパソコンに比べ、自宅のパソコンはセキュリティ対策が甘いのが普通です。

もし、パソコンがマルウェア感染したら、業務データが外部に流出するかもしれません。そして、パソコンの画面でこんな兆候が出るかもしれません。

  1. パソコンの起動が妙に遅くなる。
  2. 覚えのないWEBサイトに勝手につながる。
  3. 料金を支払えと脅すメッセージが出る(ランサムウェア)。

今日、ほとんどの会社でプライベートなパソコンに業務データを蓄積することを禁じているでしょう。しかし、もし業務データを格納しているプライベートなパソコンに妙な兆候が現れたら、素早く会社に連絡することが必要です。