叡智の三猿

~情報セキュリティで森羅万象を捉える~

フェアトレードの完全性(後半)

前回のブログでは、現在のフェアトレード「マスバランス基準」に沿って認証をしていることから、フェアトレード製品には児童労働によって生産された物質を含むことを書きました。
www.three-wise-monkeys.com
なぜフェアトレード製品に非フェアトレード物質を排除することが難しいかを書きます。

以下は一般的なチョコレートのサプライチェーンです。

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チョコレートのサプライチェーン

この図を見ると気がつくのは、一番左にある農家が生産したカカオ豆は、隣にある商社に移った段階で、複数の農家の豆が混ざるということです。

  • 児童労働を行っていない農家(フェアトレード基準に沿った農家)が生産したカカオ豆
  • 児童労働を行っている農家(フェアトレード基準に沿っていない農家)が生産したカカオ豆

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両者のカカオ豆は品質的な差異はありません。各農家で生産されたカカオ豆を集配し、世界各地に輸出をする過程で農家毎に豆を完全に分離するのは難しそうです。さらに、加工業者で液体チョコレートにする工程では、フェアトレードのカカオ豆と、そうでないカカオ豆は、同じ山に積み上げられています。それを区別することは、非常に困難です。

もし、完全なフェアトレードを実現するのであれば、チョコレート製造会社が児童労働を行っていない農家と直接契約を行い、独自の物流でカカオ豆を輸入して、製造するしかないと思います。事実、この方法でフェアトレードを実践しているチョコレートもあります。

しかし、チョコレートの製造会社によるカカオ農家からの直接買い付けは、コストと安定供給の面から課題があります。

世の中には多数のチョコレートメーカーがたくさんのブランドを出しています。そのカカオ豆の需要を商社は一括して多数の農家、業者から仕入れることで安価かつ安定的に供給ができます。

それが商社の強みです。

もし、チョコレートメーカーが商社を経由せず、独自の仕入れをしたら、原料コストが高くつきます。それは価格に跳ね返ります。一枚100円で買えた板チョコが1000円になるかもしれません。

もちろん、1000円のチョコレートであっても、その価値を認める消費者はいるでしょう。たとえば、ゴディバに代表される高級チョコレートの市場は確実にあります。

ただ、このような富裕層と、富裕層相手のビジネスは、一部で成立するものの、それによって1億5200万人と推測される児童労働(5歳ー17歳/国際労働機関:ILOの資料)を救えるとは思えません。

チョコレートは大衆品です。大衆品とは、大多数の人が共通のモノとして、いいと思って買ったり、便利だと思って使ったり、美味しいと思って食べたりするものをいいます。たとえば、年収が1000万円ある人も、300万円の人も「共通したモノ」をいいと感じるのが大衆品です。

大衆品は値札を気にせずに買えることが重要です。明治、森永、ロッテ、グリコ・・・そこからイメージする多くのチョコレートは大衆品です。

ですので、いまの世の中で、フェアトレードを実現する最適な方法は、マスバランス基準だろうと思います。しかし、マスバランス基準ということは、カカオ豆のトレーサビリティを確保出来ないことを意味します。フェアトレードとされるチョコレート製品が、どの農家で栽培されたカカオ豆かを特定できません。それは、フェアトレードの偽装を可能にするということです。

SDGs(持続可能な開発目標)の目標8は、2025年までにすべての形態の児童労働を撤廃するとしています。

それが解決困難な命題であることが分ります。