叡智の三猿

〜森羅万象を情報セキュリティで捉える

当サイトは、アフィリエイト広告を使用しています。

ハウスマヌカンはどこへ行った

ハウスマヌカン

1986年、ややが歌う「夜霧のハウスマヌカン」という曲がスマッシュヒットしました。
youtu.be

ハウスマヌカンとは、自らが販売するDC(デザイナーズキャラクター)ブランドに身を包んだ女性店員を指します。もちろん、いまでもデパートのアパレル売り場には、女性店員はいます。しかし、彼女たちをハウスマヌカンとは呼びません。ハウスマヌカンはバブル期に登場し注目を集め、忽然と夜霧に消えた職業名です。

華やかな服を着飾ったハウスマヌカンはかっこいい職業でした。「夜霧のハウスマヌカン」は、キラキラの表と対比される形で、その実態は「刈りあげても、剃りあげても・・また、毛が生えてくる」「お金もないのに見栄をはる・・また、昼はシャケ弁当」「わたし来年、三十路だわ」と、こぶしをあげて歌ったのです。

アパレルは花形の業界でした。1986年のわたしは大学生で、渋谷のデパートでアルバイトとかもしたのですが、社員は流行の最先端をいってる自信がみなぎっていました。夜遅くまでガンガン仕事をして、夜更けまで遊んでいました。

落日

あれから35年がたちました。

アパレル業界は勢いを無くしました。そのアパレルに依存している百貨店は打開策もなく落日への道をたどっています。

そこにコロナの追い討ちです。これから大リストラの予感がします。

アパレルの名門、レナウンは経営破綻しました。その記事を見たとき、わたしはコロナの影響による破綻とは感じませんでした。もちろんコロナは破綻の決定打です。しかし、バブル崩壊以降、ずっと戦いに負け続け、負け続けても、ビジネスを変革することが出来ず、破綻は時間の問題だと思っていました。

レナウンの「シンプル・ライフ」は好きなブランドですので、存続して欲しいと思います。ただ、最近の大幅な値引きを見ると、あからさまに資金回収を前面に出している感じがして、ブランドを買う「ありがたみ」を感じないのが残念です。
www.nikkei.com
レナウンだけではありません。「バーバリー」とのライセンス契約が2015年で終了した山陽商会も厳しい決算が続いています。第二のレナウンになってもおかしくないと思います。

さらにワールド(オゾック、インディヴィ、アンタイトルなど)、オンワード(組曲、ICB、23区など)、TSIホールディングス(ジルスチュアート、ナノ・ユニバース、ナチュラルビューティーなど)といった、売上ランキング上位のメーカーも安泰ではありません。ナノ・ユニバースなど、輝いてるブランドもありますが、全体としては厳しい戦いを続けています。

アパレルのサプライチェーンは複雑です。

シーズンが開始される半年くらい前から企画を行います。見込み販売を前提としたロット生産方式を組みます。春シーズンを3月からの12週とすると10週から12週分の在庫をためる生産をします。

アパレルのサプライチェーン
アパレル製品は流行に左右されます。古い服の販売は難しく、シーズン終盤は在庫をさばくバーゲン販売をします。正規の販売をプロパー販売と呼んで区別するのですが、バーゲンを前提として多めに生産しています。

見込みによる大量生産、バーゲンによる値引きは、洋服にブランド感があり、作れば高い価格で売れるのなら、いい戦略かもしれません。しかし、バブル以降の長引くデフレは不良在庫の増加を招きました。

お、ねだん以上

1998年ころからユニクロに象徴されるSPA(製造小売業)が注目されます。SPAはメーカーが持っていた商品企画を小売に持たせ、川上から川下までのサプライチェーン全体を統括する方式で成功をおさめました。

現在の国内アパレル企業売上ランキング第一位は、ユニクロやジーユーなどを展開する「ファーストリテイリング」です。アパレルの主役はSPAです。

SPAは直営の小売でお客様と接し、お客様の回遊をキャッチしています。そこから商品を企画するのに必要な多くの情報を得ています。

マーケティングには、単品(SKUといいます)売上のような定量的な情報のほか、数字に表せない定性的な情報が必要です。

  • これ、かわいいね。
  • これ、ふんわりしていいよね。
  • この色、ダサくない?

こうした、店内でお客様が発信する情報は、商品を企画するにあたっての数々の気づきを与えるでしょう。気づきを直接得られるSPAだからこそ、消費者が安心して買える「売れ筋商品」を企画する原動力になったと思います。

定量情報と定性情報

SPAはユニクロ以外にもしまむらなどがあります。アパレル以外でも家具のニトリや、メガネのJINSなどがSPAとして成功しています。そして、これらの会社が出している商品に対して、多くの消費者が直感的に感じとるのはー

「お、ねだん以上。」

ということですね。